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アレルギー追放への“生物農薬”や市民ランナーのタイム向上策など提案へ-大阪ハイテクノロジー専門学校の卒業研究発表会

大阪市中央公会堂で行なわれた大阪ハイテクノロジー専門学校の卒業研究・課題研究発表会。スポーツ学科の学生たちは3400人あまりのランナーに調査した「地域マラソンにおけるフィードバック法の検討」を発表しました

 滋慶学園グループ各校の「卒業研究・発表会」シーズンを迎えて、1月29日(金)、大阪ハイテクノロジー専門学校の「平成27年度 卒業研究・課題発表会」が大阪・中之島の大阪市中央公会堂で行なわれました。午前中の一般発表に続いて、午後からは病院や医療機器メーカーなどのご来賓を迎えて、バイオサイエンス学科の学生による「ブタクサハムシ(Ophraella communa)の生物農薬としての利用法の検討」など優秀研究5題と、中国人留学生チームによるに特別演題「中国人留学生の臨床工学技士国家試験合格への課題Ⅱ~第2種MEの取り込み~」の発表が行なわれました。各テーマの発表後には、壇上の発表チームと会場席の教職員や学生、ご来賓との質疑応答が行なわれ、研究の深化を示唆する発言などが目立ちました。

 発表に先立ち、近藤雅臣学校長から「サマリーを事前に読ませてもらったが、よくここまで頑張ったなあという内容だ。褒めてあげたい。中央公会堂という素晴らしい舞台での発表を通して、皆さんには大きく成長して欲しい。そのためには、会場からもどんどん発言していただき、活発な討論を展開して下さい」と開会のあいさつがありました。

 この日の発表会では、午前中に臨床工学技士科やスポーツ学科、柔道整復スポーツ学科、生命工学技術科、ロボット専攻、バイオサイエンス学科から一般演題21題が発表され、優秀演題発表は午後から大ホールで開催されました。学生や教職員、保護者の方々が会場席から見守る中、学生たちはチームで取り組んできた研究の成果をグラフや図解、表などを駆使したパワーポイントの画面を見せながら、順に発表。チームの全員で役割を分担しながら説明を加えていきました

優秀演題「ブタクサハムシ(Ophraella communa)の生物農薬としての利用法の検討」「地域マラソンにおけるフィードバック法の検討」

1122402「ブタクサハムシ(Ophraella communa)の生物農薬としての利用法の検討」を発表するバイオサイエンス学科の学生チーム

 トップバッターとして、バイオサイエンス学科の笹山達矢さんらのチームが、花粉アレルギーの元になっているブタクサを、除草剤を使わずにブタクサを好物にしているブタクサ虫を使って駆除できないかと取り組んだ研究発表「ブタクサハムシ(Ophraella communa)の生物農薬としての利用法の検討」を行なったのをはじめ、スポーツ科学科の 重野玲奈さんらが、市民マラソン大会10キロレースに出場した男女3438人を対象にマラソン記録と運動意識や運動習慣の関係性を調査した「地域マラソンにおけるフィードバック法の検討」を発表しました。データ分析から記録と運動意識や運動習慣との強い関連性を読み取った重野さんらは、「市民ランナーのタイムの向上や運動習慣を身につけるためのプログラムをぜひ提案していきたい」と述べ、会場から大きな拍手を浴びていました。

臨床工学技士学科から優秀演題「人工心肺装置操作時における灌流量自動調整システムの作成」など2題

1122402会場から真剣な表情で発表を聴く学生の皆さん

このほか、優秀演題として、人工心肺装置を使う長時間の手術で、緊張の続く臨床工学技士の負担を減らすための灌流量自動調整システム「人工心肺装置操作時における灌流量自動調整システムの作成」と、病院で数量の限られた医療機器を効率よく使えるための管理システムの構築に取り組んだ「医療機器管理補助システムの作成 位置情報および使用状況管理システムへの取組み」が臨床工学技士科の2チームから、「エナジードリンクが敏捷性と集中力に及ぼす影響について」が柔道整復スポーツ学科のチームからそれぞれ、発表されました。

 

 各発表が行なわれたあとは、会場の聴衆との質疑が行なわれ、在校生から「ブタクサを加工する際に、手がかぶれるといったアレルギー反応のようなものはなかったのか」といった質問や、病院で働く臨床工学技士の方からは「ナースステーションでバーコードリーダーへの読み込みを忘れたらどうするのか」「確かにこのような装置が出来ると助かる。患者さんの血圧そのものを直接、反映できるシステムならもっといいのではないか」といった提案や、教員からは「もしこのシステムが動かなくなった時に、どのように事故を回避するのか」「20代と30代以上の女性に差が出ていて、それは加齢によるものだと発表があったが、年齢の差だけだと言い切れるのか。それ以外に考えられる原因はないのか」と、学生たちに新たな視点を与えるような、突っ込んだ質問がとんでいました。

日本で臨床工学技士をめざす中国人留学生チーム 国試合格への取組みを発表

1122402日本で臨床工学技士の国家試験をめざす上海の大学からの留学生の皆さん

 この日、特別演題として、大阪ハイテクノロジー専門学校の臨床工学技士科で学ぶ王偲卓さんら上海医専大学からの留学生7名が「中国人留学生の臨床工学技士国家試験合格への課題Ⅱ~第2種ME検定への取組み~」を発表しました。

 王さんらは、中国の上海医専大学で3年間、臨床工学の基礎を学んだあと日本に留学、同専門学校の日本語学科で1年半学び、昨年、同専門学校の臨床工学技士(ME)専攻科1年コースに進学しました。これまで、同じルートで学んだ28名の先輩中国人留学生が日本の国家試験に合格し、日本の病院で臨床工学技士として働いています。

 

 

 王さんらは、すでに中国の大学で臨床工学についての十分な基礎知識を身に付けています。しかし、日本語で表記された国家試験は難しく、来年に受験する国家試験の合格をより確実にするために、前哨戦として「第2種ME技術実力検定」に挑戦しようと考えました。そこで皆で分担して、参考書に出てくる専門用語を中国語訳し、過去問題に挑戦しています。

 その結果、これまでは受身の学習だったが、自主的に学ぶ姿勢の大切さを身に付け、モチベーションを上げること、早期に勉強を始めることの大切さなどを実感。王さんらはこの貴重な経験を今後、日本に留学してくる後輩たちにぜひ伝えたいと、この日の発表に参加しました。その貪欲なまでの学びの姿勢に、会場の在校生らから、大きな声援の拍手が贈られていました。

「いずれも面白い発表だった」 両金FBI大阪代表が講評

 講評に立ったフジサンケイビジネスアイ大阪代表の両金史素氏は、まずブタクサハムシの発表について、「こういう農法は環境問題も含めてこれから大事になってくる。花粉問題という社会問題に着眼点を置いてブタクサハムシの利用法を検討されたことは良かった」と述べ、人工心肺装置の灌流量自動調整システムについては、「難しい内容だが、図や写真、動画をうまく使っていて分かりやすかった。社会的な意義のある研究で、商品化まで進めて欲しい」と述べるなど、全演題について一つ一つ丁寧に注釈を加えながら、「いずれも面白い発表で瞬く間に時間が過ぎてしまった」と述べました。

1122402発表学生を代表してお礼の挨拶を行なうスポーツ科学科の重野玲奈さん

 学生を代表して、演題3の発表チームの重野玲奈さんが「卒業研究を通じて、協調性の大切さに気づきました。皆で協力して困難や苦難を乗り越えることによって、自分たちの納得のいく発表を行うことができました。真摯に研究に向き合える環境に感謝し、今後も研究を続けていきます」と力強くお礼の言葉を述べました。

 また、教職員を代表して、奥谷先生が「うまく発表できたとか、出来なかったとかは、一つの評価に過ぎません。この課題研究を通じて身につけて欲しいのは、プレゼンテーション能力はもちろんですが、問題に気が付く能力や情報を集める能力、計画を貫く能力、さらにはチームで協働する能力です。教員はそのことを評価しています。これらの経験を糧にそれぞれの道に邁進されることを期待しています」とこの日の発表会を締めくくりました。