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アジア臨床工学の発展と貢献をテーマに「第4回アジア臨床工学フォーラム」が開催されました 10カ国・地域から300名が参加 大阪滋慶学園など主催

アジア10カ国・地域から約300人が参加して開かれた「第4回アジア臨床工学フォーラム」

 医療機器の高度化や複雑化に伴い、臨床工学技士の活躍の場が増す中、「第4回アジア臨床工学フォーラム」が11月2日(土)、「アジア臨床工学の発展と貢献」をテーマにアジア10カ国・地域から約300人が参加して、東京・中央区の東京コンベンションホールで開かれました。

 招聘講演2題を含む計5題の講演と、1つのパネルディスカッション、2つのシンポジウム、さらに過去最高の28の演題を集めたポスターセッションと中身の濃い内容で、臨床工学の質の向上とアジア各地で不足している臨床工学技士の養成問題など、臨床工学を取り巻く諸問題について報告や議論が行なわれました。

2012年以来、日本では2度目の開催

 学校法人大阪滋慶学園と滋慶医療科学大学院大学、アジア職業人材養成センターが主催、中国医師協会と中華医学会、上海中医薬大学、上海健康医学院、深圳職業技術学院、広東医科大学、広東薬科大学の共催、後援は文部科学省、東京都、日本臨床工学技士会、日本臨床工学技士教育施設競技会、臨床工学国際推進財団、東京都臨床工学技士会、大阪府看護協会、中国医師協会、中華医学会、朝日新聞社、日刊工業新聞社、フジサンケイビジネスアイで開かれたもので、2012年4月に医療の安全を探究する滋慶医療科学大学院大学の誕生を記念して「第1回フォーラム」が大阪で開催されて以来、日本では2度目の開催となりました。この間、第2回フォーラムが2016年に、第3回フォーラムが2018年に、それぞれ中国・上海で開催されています。

 フォーラムには、日本、中国、台湾、シンガポール、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、カンボジア、ネパール、ミャンマー、タイの10カ国と1地域、オブザーバーとしてアメリカが参加、臨床工学技士や医師・研究者、医療機器メーカー関係者ら、ミャンマーからは政府関係者が出席しました。

【開会の挨拶】 浮舟総長「資格の国際標準化や新たな連携に期待」

実行委員長として開会のあいさつを行う浮舟邦彦総長

 午前9時、まず主催者を代表して学校法人大阪滋慶学園理事長で滋慶学園グループ総長の浮舟邦彦実行委員長が歓迎と開会のあいさつを行ないました。
 浮舟総長は、「今後、医療の発展、医療の質の安全強化のためにも臨床工学の発展と貢献は重要です。医療機器はAIやICTの進歩とともに高度化、複雑化が進んでいます。スペシャリストとしての臨床工学技士の存在は益々重要になってきます。グローカルな時代背景の中、資格の国際標準化やアジア各国に於ける技士のレベルの高度化が課題です。このフォーラムから課題の解決や新たな連携、つながりが出来ればと期待しています」と述べました。

 最初の招聘講演として、公益社団法人日本臨床工学技士会 理事長の本間崇先生が「臨床工学の現状と将来に向って」と題して講演を行ないました。

【招聘講演Ⅰ】 日本臨床工学技士会 本間崇理事長が「臨床工学の現状と将来に向って」を講演

 本間先生は1987年に臨床工学技士法が公布され、これによって第1回臨床工学技士国家試験が実施され、以来、今年3月時点までに4万5670人が合格、現在、同技士会の会員は2万392人に達したと報告。会員の67%が20代から39歳までの若い層で占められ、女性の比率もアップしていると述べました。

 また病院の医療機器安全管理責任者になっているのは、同技士会調査によれば、医師が約2.5割で、臨床工学技士が約7割に上っていると報告、今後の事業として、(1)医療安全の推進、(2)高齢化社会への対応として在宅医療への積極的な参画、(3)医師の働き方改革への対応としてのタスク・シフティング、(4)国際交流活動を挙げ、益々、臨床工学技士の役割が拡大し重要になってくる、と述べました。

  • 招聘講演を行なう日本臨床工学技士会の本間崇理事長

  • 本間理事長

 AIやIoT、ICTの導入に伴い、遠隔操作も臨床工学技士の業務の中に入る可能性があることや、機器管理、血液浄化など専門分野ごとに資質の向上を目的とする「認定医療機器管理検定」や「認定血液浄化検定」の更なる充実、今年度から開始した「認定集中治療臨床工学技士」制度の運用などについてもふれ、大学化や大学院大学設置の必要性も訴えました。

 国際交流分野では、国際学会等に於ける学術交流や新興国への技術の委譲、日本型臨床工学技士制度の海外への普及及び啓発などに取り組むべきだと述べ、フォーラムの存在意義を強調。さらに昨年の6月からミャンマーのUniversity of Medical Technology, Yangonで臨床工学技士(ME)の育成を行なう人材育成支援を行っていることを紹介、今後の国際交流活動の必要性などを訴え、講演を終えました。

【招聘講演Ⅱ】「中国臨床工学技士の専門的能力の開発と期待」を急遽、劉先生が代理発表

中国医師協会臨床工程師分会の高関心会長

 招聘講演Ⅱとして予定されていた中国医師協会臨床工程師分会会長の高関心先生による「中国臨床工学技士の専門的能力の開発と期待」は、高先生が公務のため急遽、来日出来なくなったため、高先生からのビデオレターが上映され、中国医師協会臨床工程師分会の劉学軍先生から発表内容の紹介が行なわれました。

 講演は職業発展の現状、学会の発展の現状、未来の発展の順に行なわれ、中国に於ける「臨床工程師」は、1960年代に始まり、職務任命制から現在の職業資格制度に発展し、国家試験で評価、仕事としては呼吸治療、内視鏡技術、血液浄化、映像技術、人工心肺技術に従事し、職業ランクとして高級、中級、初級の3ランクがあると紹介。教育は1960年代に北京医療機器学校や上海医療機器学校に始まり、1970年代には浙江大学や西安交通大学などに広がり、現在、バイオメディカルエンジニアリングのプログラムは中国の169の大学に設けられていると報告。2014年に中国医師協会の中に臨床工学技士分会ができ、その後、様々な学会ができ、学会誌も生まれていると紹介しました。

 また、臨床工学の技術者は約20万人おり、うち機器の管理の仕事をしているのが6割、実際に医療技術の応用を行なっている人が4割。医師、看護師、薬剤師とお互いに協力関係にあり、医療機器の使用責任をもち、医療機器の適切な使用を促進する職責に変わってきていると述べました。

 臨床工学の今後の発展の方向は、臨床へ向かい、医療スタッフ、患者に対して直接臨床工学の技術をサービスし、機器の合理的な使用をアドバイスしていくことになると説明。医療機器の評価のためのデータを蓄積し、メーカーに対して情報を提供するとともに、安全に対する提案も行なっていくと述べました。

【教育講演Ⅰ】 復旦大学の鄔小玫教授による「復旦大学など中国大学の生物医学工程概況」

 
 

教育講演を行なう復旦大学の鄔小玫教授

 教育講演では、復旦大学情報科学工程学院教授で同学院生物医学工程センター副主任の鄔小玫先生による「復旦大学など中国大学の生物医学工程概況」の講演と、公益社団法人日本臨床工学技士会理事で愛知医科大学医学部客員教授の瀬上清貴先生による「日本における臨床工学技士法の制定から今日に至る臨床工学技術の発展~世界における日本国臨床工学技士法の意義とその普及の重要性~」の講演が行なわれました。

 英語でのスピーチを行なった鄔先生は、長寿が多い新疆ウイグル自治区などでは、女性が男性よりも長寿であることや、1979年に復旦大学に生物工程医学学科が誕生、上海市に同学会が設立され、翌年には中国生物工程医学学会が設立、多くの有名な研究者が出現し、中国の生物医学工程(BME)研究が世界的にも有名になったと報告。さらに中国のBME発展の歴史について述べ、1998年にBME学科をもつ大学は17校だったのに、2018年には170校と急激に増え、BMEの教育委員会が中国教育省に設置され、ドキュメント基準も作成、5つのBME競技会が開始され、教育に於ける認定も構築したと述べました。さらに40以上の教科書の作成やハイレベルのフォーラムも実施、国も高機能の医療機器のナショナルブランドの構築を推進していると報告。

 後半は復旦大学の取組みを紹介し、78年にBMEの学位、そして医学・電子の修士号、91年には博士号プログラムを開始、2003年には、モバイルステーションの博士号領域を開設した。学部生の50%は修士課程に進学し、50%が就職すると紹介しました。
 東南大学生物電子学園や南京医科大学転化医学研究院など姉妹校での活動を紹介、最後に大阪滋慶学園とも連携する上海健康医学院についても紹介、大阪大学の鈴木良次教授らとの学術交流についてふれ、橋本常務理事が王威棋先生や鈴木教授と並んだ写真も紹介しました。
 鄔先生は「サイエンスや技術が進化すればするほど、人格や人が重要になる」と述べ、「開発の方向性をきちんと標準化していくことが必要。また人とアートをプラスしたものが医学であり、科学と人、アートの組み合わせがさらにBMEを前進させていけると信じている」と述べ、中国の詩人、王勃の書いた友情の詩を紹介して講演を締めくくりました。

【教育講演Ⅱ】 日本臨床工学技士会の瀬上清貴理事「日本における臨床工学技士法の制定から今日に至る臨床工学技術の発展~世界における日本国臨床工学技士法の意義とその普及の重要性~」

  • 教育講演Ⅱを行なう日本臨床工学技士会の瀬上清貴理事

  • 日本臨床工学技士会の生涯教育プラン構想

 英語で講演を行なった瀬上先生は、30年前に日本の臨床工学技士法が制定され、これによって臨床工学技士が心臓手術や人工透析医療など患者の安全の確保という立ち位置から、工学的知識と技能を駆使して、医療機器の操作と管理に専心することができるようになった。だからこそ医師は全幅の信頼を置いて、手術に集中でき、世界からもこの制度が注目されている、と紹介。アジア各国でも類似の法を制定していく際の重要ポイントとして、生命維持管理装置の法的位置付けや、「工学的安全性の確保と医療的安全性の担保に関する考え方」、「患者の安全性確保への考え方」が法の精神として盛り込まれていること、「チーム医療の原則」が明示されていることの意義について、言及しました。

 また、高度な技術・知識を有する「管理臨床工学技士」認定制度を目指す日本臨床工学技士会の生涯教育プラン構想の概要についても説明を行ないました。

【シンポジウムⅠ】 「アジア各国の臨床工学-現状、課題、その他」

 司会=猶村友隆先生(倉敷芸術科学大学 准教授)、発表者=井福武志先生(日本臨床工学技士会 副理事長)、Pham Van Bui先生(ベトナム 教授)、Muhammad Amin先生(インドネシア 教授)、Nahid Sultana先生(バングラデシュ)、Hy Chanseila先生(カンボジア)、Roshan Bajracharya先生(ネパール)

シンポジウムⅠでは、猶村先生の司会で各国の現状や課題が報告されました

 シンポジウムはⅠとⅡに別れ、シンポジウムⅠでは倉敷芸術大学准教授の猶村友隆先生の司会で「アジア各国の臨床工学-現状、課題、その他」が行なわれました。

 日本臨床工学技士会副理事長の井福武志先生が医師の働き方改革に伴って、臨床工学技士への業務移管による業務の拡大が想定されると述べ、質の向上のための「生涯教育プラン構想」を紹介。プランは、「認定臨床工学技士」や「専門臨床工学技士」のスペシャリストコースと、キャリアアップ教育プログラムによる中級・上級認定などマネジメントリーダーコースに分かれ、最終的には両コースとも「管理臨床工学技士」認定につなげたいと、技士会としての構想を明らかにしました。

  • 井福先生

  • 司会の猶村先生

 このほか、ベトナムやインドネシア、バングラデシュ、カンボジアなどの大学教授や病院関係者らが、制度や医療環境の未整備、病院での臨床工学人材の不足など、それぞれの国や都市における臨床工学事情を報告。ネパールでは人工透析の無償提供や腎移植費用の支給の制度があり、多くの人が救われていることなども報告されました。

  • ベトナムのPham Van Bui教授

  • インドネシアのMuhammad Amin氏

  • ネパールのRoshan Bajracharya氏

【シンポジウムⅡ】 「臨床工学技士の職場及び人材養成のグローカル化への変化」

司会=廣瀬稔先生(北里大学 教授)、発表者=銭鋒先生(上海健康医学院 教授)、才脇直樹先生(奈良女子大学大学院 教授)、徐剛先生(中国 上海中医薬大学 副教授)、鄒國鳳先生(台湾 元倍医事科技大学 助教授)、田中佑樹先生(ニプロ)

  • 台湾の鄒國鳳先生

  • 司会の廣瀬稔先生

  • ニプロの研修センター

 「臨床工学技士の職場及び人材養成のグローカル化への変化」のテーマで、北里大学教授の廣瀬稔先生の司会で行なわれ、中国や台湾、日本の大学教授らが出席、「多くの臨床工学の人材を養成しているが、質の向上に課題がある」(台湾)といった臨床工学における人材の教育や現状の問題点などについての報告が行われました。

 医療機器メーカーのニプロからも、「当社における医療研修施設iMEPの海外での取り組みと、医療機器開発」について発表。滋賀県草津市の研究拠点ニプロ・ライフサイエンスサイトに医療従事者向けの研修施設「NIPRO iMEP」を開設し、国内や海外から研修者を受け入れ最新機器を使いながら指導にあたっていることや、上海やカンボジア、ミャンマーなど海外でも研修施設を開設し、人材育成やサポートに力を入れていることを紹介しました。

【パネルディスカッション】 「グローカル医療に求められる臨床工学の展望」

司会=加納隆先生(滋慶医療科学大学院大学教授)、パネリスト=猶村友隆先生(倉敷芸術科学大学准教授)、劉学軍先生(中国 日中友好医学院教授)、Myo Thuzar Khin先生(ミャンマー ヤンゴン医療技術大学)、Wang Hong先生(シンガポール イージス・インマヌエル腎臓透析センター)、Khajohn Tiranathanagui先生(タイ Chulalongkorn大学)

  • 司会の加納隆先生

  • 5カ国の臨床工学専門家によるパネルディスカッション

滋慶医療科学大学院大学の加納先生が進行

 午後3時40分から、日本、中国をはじめ、ミャンマーやシンガポール、タイの各国代表によるパネルディスカッション「グローカル医療に求められる臨床工学の展望」が滋慶医療科学大学院大学教授の加納隆先生の司会で進められ、議論の中から多くの課題や今後の目指すべき方向性などが明らかになりました。
 司会の加納先生がまず、「今後、どう臨床工学技士をアジアに展開していくのか、それぞれの国がどう取り入れていくかといった話にしていければと考えています」と議論の方向性を示し、このあと5カ国の代表がそれぞれの国に於ける臨床工学を取り巻く現状や課題を報告しました。

各国の透析治療 保険制度が確立すれば爆発的に増える 猶村先生

 トップバッターの倉敷芸術科学大学准教授の猶村友隆先生が、日本臨床工学技士会など5団体と共に、ミャンマーやカンボジアなどアジア各国で行なっている血液浄化技術支援やセミナー開催などの国際交流活動を報告。アジア各国では透析治療がまだまだ普及していないが、「保険制度が確立すれば、爆発的に増えるのではないかと思う」と述べ、今後、臨床工学技士制度が確立している日本が果たすべき役割が大きいことを示しました。ミャンマーのヤンゴン大学でJICAと共に進めているプロジェクトの現状や、アフリカ各国からもODAで入った医療機器が適切にメンテナンスされずに廃棄に回っていることから協力を求められていることなども報告しました。

  • 猶村友隆先生

  • 中国の劉学軍先生

中国は透析の大国

 中国で10年前に臨床工程師を立ち上げた日中友好医学院教授の劉学軍先生からは、中国は人口も大国だが透析の大国でもあり、2017年に51万人の透析患者がおり、このままなら2018年は60万人に上ると予測しました。臨床工学技士も急増しており、各地で臨床工学技士の組織が出来て1万人近い臨床工学技士が血液浄化にあたっている。2019年には透析室に必ず一人、専任の臨床工学技士を置かなければならない規範も出来た。しかし、まだ日本のようにその重要性が十分に認識されていないし、教育機関も足りていない現状があると指摘しました。

 

ミャンマーのMyo Thuzar Khin先生

臨床工学を学ぶ学生はほとんどが女性 ミャンマー

 ミャンマーのヤンゴン医療技術大学のMyo Thuzar Khin先生は、JICAの協力による5年間のメディカルエンジニア人材開発プロジェクトを紹介、臨床工学を学ぶ学生のほとんどが女性であることや、日本から40人の講師が参加していること、まだまだ揺籃期にあり、急いで進展させなければならないと訴えました。

 シンガポールのイージス・インマヌエル腎臓透析センターのWang Hong先生は、高齢化に伴い、透析患者数、腎臓移植患者数は増えており、医療支出も増えている状況だと報告しました。

将来稼動したい日本型の臨床工学システム タイ

 最後にタイのChulalongkorn UniversityのKhajohn Tiranathanagui先生は、透析患者が年々、増加し続けているが、政府が透析治療費を負担するなどの政策をとっている。ダイアライザーの洗浄、再処理は血液透析看護師が担当、水処理や透析回路の準備も行なっている。日本のような臨床工学のエンジニアのシステムはないが、将来的には稼動することになるだろうと述べました。さらに透析センターの監視や認定はNPO法人が担当していることや、過去10年間に包括的な透析登録システムのデータ蓄積を行なってきたことも報告しました。

 各パネラーからのショートスピーチを受けて、ディスカッションに入りました。

[討論] 人材不足、言葉の問題、業務を一括するカテゴリーなど課題は多い 

加納先生 各国の透析事情はわかったが、日本の臨床工学技士は、透析以外の人工心肺や人工呼吸療法業務、心臓カテーテル、ペースメーカー、酸素治療、内視鏡、ダビンチなど幅広い業務を担当しています。各国ではそういう業務は誰がやっているか、状況はどうかを教えて下さい。

それぞれの国の課題を話すパネリストの先生方

劉先生 中国では日本の臨床工学技士会のような組織はまだありません。透析患者が多いので、患者組織はできています。病院では人工心肺の技士がいるし、ICU手術室にも技術者がいますが、独立した専門的な組織はありません。現在は医師協会の臨床工程師分会の傘下にそれぞれのサブ機関が設置され、今年度は血液透析の専門委員会が立ち上げられました。近く胃カメラ、内視鏡、呼吸器の専門員会も立ち上げられる予定です。
 臨床工程師は大きなカテゴリーとなっており、様々な業務を一括して管理することによって将来は日本の臨床工学技士とマッチングできるようになると思います。

加納先生 ぜひそのような形で発展させていっていただきたいと思います。

医療機器の操作はナース シンガポール

Myo Thuzar Khin先生 ミャンマーではメディカルエンジニアリングの人が医療機器の保守、管理にあたっています。医療機器だけでなく診断器についてもやっています。しかし、より多くのプロフェッショナルなメディカルエンジニアが必要になっています。

Wang Hong先生 シンガポールでは、特に専門の医療技術者が担当するシステムはありません。医療機器の保守・管理はすべて医療機器メーカーによって行なわれています。医療機器の操作はすべてナースが行っています。

Khajohn Tiranathanagui先生 タイでも修理は医療機器メーカーです。人工心肺などのオペレーションは、パーフュージニストと呼ぶトレーニングを受けた還流のテクニシャンがやっています。血液装置もその専門のテクニシャンがやっています。放射線の装置もそうです。

加納先生 それぞれの専門家は何らかの認定とかをうけているのでしょうか。

Khajohn Tiranathanagui先生 例えば人工心肺なら循環器学会、放射線なら放射線学会が認定しています。それぞれの業務によって、別々の組織が認定しているのです。

求められるのは英語の出来る国際臨床工学技士 

加納先生 アメリカに近いスタイルですね。楢村先生は教育や技術支援を行なっておられますが、先生が感じられている今後の課題はなんでしょうか。

シンポジウムⅠの司会も務めた猶村先生

猶村先生 今、多くの日本の臨床工学技士の方に協力いただいて、ミャンマーでの支援を進めていますが、人材不足は否めません。原因の一つは言葉の問題です。現地に通訳の方を一人置いていますが、提供してもらうテキストやスライドは英語なので、できるだけ英語が出来る方に協力いただきたいと思っています。今日は学生の皆さんも見えておられるので、ぜひ今のうちに語学をしっかりと勉強し、国際派の臨床工学技士になっていただけたらと思います。

それぞれの国に合った教育プログラムが必要

 もうひとつ、日本式の臨床工学制度をそのまま持ち込むのではなく、それぞれの国が抱える問題や実情、ライフスタイル、考え方があるので、それに合った教育プログラムが必要です。そのためにはどうあるべきかを考えて支援を進めています。

加納先生 もっと英語の勉強をしなさいといわれて耳の痛い方も多いかと思いますが、技術的な会話はそれほど複雑ではありません。私も直接やり取りできるようにチャレンジして欲しいと思います。今はボイストラのような多言語の音声通訳ソフトもあるので心強くはなっていますが、直接、コミュニケーションを取る事が大事だと思っています。

まとめに入る司会の加納先生

フォーラムの中で評価された「グローカルな日本の臨床工学技士」
 時間がなくなってきたのでまとめに入ります。今回、グローカルという言葉を初めて聞いた人もおられたかも分かりませんが、臨床工学はクリニカルエンジニアといって、元々はアメリカ発です。ただ、それはメンテナンスとマネジメントだけでした。臨床業務はそれぞれの学会・協会が認定していて、日本の臨床工学技士のように一つに纏まった資格ではなかったわけです。

 日本の臨床工学技士は元々、グローバルだった欧米型のクリニカルエンジニアから始まったグローカルな臨床工学技士ということで、幅広く業務が出来る素晴しい資格だと思います。今日参加されたお国の方々からも大変な評価を頂いて、我々としても嬉しい限りです。ぜひそれぞれのお国でも臨床工学を発展、充実させて頂いて、またこういう機会に御発表いただければと思います。

【特別講演】 ロマリンダ大学心肺学部 学部長 David Lopez先生 「米国臨床工学の歴史と現状:卓越を目指す連携」

 最後に一般財団法人臨床工学国際推進財団理事長の川崎忠行先生の司会で、アメリカのロマリンダ大学コメディカル部の准教授で心肺科学学部学部長のDavid Lopez先生が「米国臨床工学の歴史と現状:卓越を目指す連携」と題して特別講演。最初にスニーカーの写真を見せて、色の受け止め方が人によって違うことから、人間は考え方や見方が違っても協業・協力はできると述べました。

 先生は、1940年代に臨床工学の概念が誕生して以来、資格制度や認証評価制度の開発、職務や教育のガイドラインの制定や臨床工学国際認定委員会(ICC)の設立、認定制度の再編などを経て、2002年、臨床工学認証プログラム(CCE)がACCE(アメリカ臨床工学大学協会)によって組織され、卒業学位と認定機関による認定後、さらにICCの資格再認定を受ける仕組みになっていると紹介。
 業務についても、臨床工学に関わるCEやBMEの業務範囲が病院内にとどまらなくなったことから、2011年にAAMI(米国医療機器振興協会)との会合で医療機器の保守管理をHTM(Healthcare Tecnology Management)と新名称にし、その下にBMETやCEを位置付け、これによってより多くの業務が出来るようになった、と説明しました。

  • 臨床工学技士の職域拡大の一つとして神経工学との連携を示すスライド

  • David Lopez先生

未来に限りなく発展の可能性を持つ臨床工学技士

 臨床工学技士(CE)は、工学専門職として医療技術の計画、評価、管理、分析、教育支援に従事。BMETや科学者、医学専門領域、医療専門領域、理学療法、呼吸療法、義肢装具、看護、臨床検査らに従事する医療従事者と協業することによって、さらに技術面が進歩し、さらにより広範囲にわたって協業、協力が起こっているのが現実だと紹介、このフォーラムのように、いろんな人と出会い、協業をすることが大事だと訴えました。

 臨床工学と他の医療領域の人々とのコラボレーションによって、ダビンチの操作のように、基礎研究の内容が技術的に専門性の高い領域で応用させることが出来、臨床で使えるようになる。さらに組織の再生科学医療や人工関節、心臓弁にも貢献できていると付け加えました。また、神経工学でも脳の中に入れる非常に小さい医療機器はCEかバイオメディカルのエンジニアの領域で、どうすれば動かせるのか他の職種では思いつくことができないと思うと述べました。
 さらにバイオメカニックスや神経工学、遠隔医療、テレメディシン、バイオコミュニケーション、画像テクノロジー、セレグラフィー、ナノテクノロジー、そしてAI、機械学習、AR(拡張現実)、宇宙航空等々とのコラボレーションを考えていけば、「皆さんの専門領域は限りなく広がっていくでしょう」と、将来への臨床工学技士の可能性を示しました。

司会の川崎忠行先生

 そして、今後5年、10年先にも起こりうる状況変化に対応するために、「どのように学習していくのか、教育も変わっていくでしょう。自分たちがいろんな人たちと自ら関わって、新しいことを学んでいくことが必要になります」と結びました。

 講演後、「新しい工学的な治療などに対応できる人材を育てる教育はどのようにやっていけばいいのでしょうか」という川崎先生の質問に対して、同学部長は、「他の専門職にも言えますが、好奇心を持ち続けることが必要です。質問し続けるということが必要です。常に他にも違ったやり方があるということをいつも考えるようにしてください」と答えました。

ポスター発表 最優秀賞は上海健康医学院の張さん、優秀賞に埼玉医科大学大学院の榎本さん 

 また大学生や大学院生、専門学校生ら28チームによる研究ポスター発表が行われ、最優秀賞に超音波によって障害物を検知できる盲導杖の研究「広域超音波盲導杖」を発表した上海健康医学院の張サン(火ヘンに山)さんが選ばれ、優秀賞に「医療機関における無線LAN環境可視化システムの構築」を大成建設株式会社や滋慶医療科学大学院大学と共同研究した埼玉医科大学大学院医学研究科の榎本幸佑さんに贈られました。

  • 浮舟邦彦総長から最優秀賞を授与される上海健康医学院の張さん

  • 優秀賞に選ばれた埼玉医科大学大学院の榎本さん

  • 竹本大阪支社長から日刊工業新聞社賞を贈られる出雲医療看護専門学校の内村さん

 また日刊工業新聞社賞が「遠心ポンプやローラーポンプの入口圧力計測によるキャビテーション検知の検討」の研究発表を行なった出雲医療看護専門学校臨床工学技士学科の内村駿さんをはじめ、「知能的睡眠時間監視と介入システム」を発表した上海中医薬大学の裴華夫さん、「拡張現実デバイスを使用した人工呼吸器トラブルシューティングのためのシミュレーションベースのトレーニングシステムの開発」を発表した北里大学大学院医療系研究科の木原拓馬さんの3人が選ばれました。

 最優秀賞、優秀賞が実行委員長の浮舟邦彦総長から、日刊工業新聞社賞が取締役西日本担当の竹本祐介大阪支社長からそれぞれ受賞者に贈られました。
 出雲医療看護専門学校臨床工学技士学科の内村駿さんは、「初期段階でキャビテーションの発生を検知できないか春から研究に取り組んできました。ポンプ入口の圧力を計測することで可能性が見い出せ、それを簡潔にまとめたつもりです。認めていただき、とても嬉しいです」と話していました。

橋本常務理事が閉会の辞

閉会の挨拶を行なう大阪滋慶学園の橋本常務理事

 フォーラムの最後に、主催者を代表して、学校法人大阪滋慶学園の橋本常務理事が発表内容について取り上げたあと、「皆さんが悩んでおられるのは、人材の養成です。本日の各セッションに共通した課題であり、このアジア臨床工学フォーラムへの課題をいただいたと思います。このファーラムに参加された皆さんが力を合わせてどう乗り切っていくかという宿題だと思います」と述べ、ポスター発表を行なった学生の活躍を紹介し、「素晴しい若いエネルギーを感じました。賞を受賞された皆さん、本当におめでとうございます。各国の皆さんの臨床工学に取り組むエネルギーも感じましたし、そのエネルギーをもらって、2年後の次の第5回アジア臨床工学フォーラムに取りかかろうと思います」と閉会の言葉を述べました。

前日には前夜祭

  • 前夜祭ではフォーラム参加者が交流

  • 浮舟総長もホストとしてお出迎え

 フォーラム前日の夜には、アジアの国々から次々と到着する参加者の皆さんを迎えて、ウェルカム前夜祭が開かれました。

 浮舟総長や橋本常務理事、滋慶医療科学大学院大学の木内淳子学長らが歓迎のあいさつを行い、翌日の講演発表者の紹介が行なわれ、大阪ハイテクノロジー専門学校の織田豊局次長による、これまでの過去3回のアジア臨床工学フォーラムについての解説も行なわれました。

  • 挨拶を行なう木内学長

  • 織田局次長

 会場のあちらこちらでは、臨床工学に携わるアジアの国々の人たちが英語や中国語で談笑するなど、交流を深めていました。東京滋慶学園の中村道雄理事長らの姿もあり、ポスター発表に参加する学生の皆さんも招かれて、国や学校を越えて楽しげに話し合っていました。

  • 吉﨑歌葉子先生

  • 小川正子先生

 またフォーラムの開催にあたっては、学校法人大阪滋慶学園の各校幹部や教職員が準備やアテンドのためにかけつけ、当日のフォーラムでは、総合司会を大阪保健福祉専門学校教務副部長の吉﨑歌葉子先生が担当、優秀ポスター賞授賞式は大阪医療技術学園専門学校教務部長の小川正子先生が担当しました。また、東京医薬専門学校の学生の皆さんが、案内やクロークなどのお手伝いを兼ねて参加しました。


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