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滋慶医療科学大学院大学4期生入学式 「医療安全」へ多職種連携での学びスタート

4期生を代表して武田学長に向って宣誓を行う間宮直子さん。入学動機は「高齢者の皮膚トラブルの安全管理についての研究が出来れば…」

 滋慶医療科学大学院大学(大阪市)が「医療の質と安全」の専門家を育成する日本で初めての修士課程としてスタートして3年。その4期生の入学式が4月6日(日)、花冷えの中、新大阪駅前の大学院9階の視聴覚大講義室で行なわれました。式には、国内外からのご来賓に加えて脳神経外科学や内科学、医分子生物学、生体材料学、医用安全工学、医療情報学、看護マネジメント学、麻酔学、心理学、病院管理学、経営学など、「医療安全管理学」とその周辺領域を支える学問分野の第一人者である教授・講師陣24名が出席しました。

 同大学院は大学や専門学校の4年制専門課程を卒業(卒業見込みを含む)していることが入学資格ですが、同時に専門学校(2年制や3年制)などを卒業後に医療現場等で実力をつけた社会人にも門戸が開かれているのが特徴です。

 今年度も新入生は大阪、兵庫などの病院に勤務する看護師を中心に、介護福祉士や鍼灸師、視能訓練士など学歴も職歴も様々な男女20名の社会人です。仕事に加えて家庭をもっていたり、子どもを抱える人もいます。これからの2年間、学業への様々なハンディを抱えながら、平日5日間の夜間と土曜日のまる一日をかけて大学院に通い、それぞれの「医療安全」のテーマについて研究を進め、修士論文執筆に挑戦します。

武田学長「横の多職種連携を大切に、チーム教育で臨む」

武田裕学長武田裕学長

 大阪大学名誉教授で医学博士の武田裕学長は、「わが国の医療は高齢化社会を迎えて年々質的に多様化し、かつ量的に拡大しつつあります。そうした中で患者さんの安全という最も肝心な点ではまだまだ課題が残っていると思われます。入学生の皆さんは医療を何とかしよう、あるいは自己実現しようと高い志を持って入学して来られました。それも仕事を持ちながら、家庭を持ちながら、2足どころか3足のわらじを履きながら頑張る事になります。並大抵のことではないと覚悟しておいて頂きたいと思います。しかし、自分のやりたかったことに挑戦できる人生の中でももっともすばらしい2年間になるのではないかと思っています。これからの医療は縦割りだけではなく医師とコメディカルによる横の連携、チーム医療が大切になってきます。我々にとってはそのためのチーム教育も重要なテーマです。すでに立派に社会で活躍している1期生、2期生の卒業生もチームのメンバーです。どうかそのことを意識して前向きに、授業を受ける喜び、研究できる喜びを謳歌していって下さい」と訓辞を行いました。

浮舟総長「医療安全、リスクマネジメントは経営の問題」

浮舟邦彦総長浮舟邦彦総長

 理事長である滋慶学園グループの浮舟邦彦総長は「本大学院は開校準備をしていて大震災直後の2011年の4月に開校しました。何かの運命を感じさえしますが、大震災では日本のリスクマネジメント、さらには医療・福祉の分野における安全管理についての問題を投げかけられました。発生以前からリスクマネジメントはどうあるべきか、セーフティネットはどうあるべきかに取り組むことが重要な課題と言えます。滋慶学園は様々な医療分野の専門職を世の中に送り出してきました。そうした様々な専門職が連携するチーム医療やチーム福祉が重要な課題だとの現場からの声を聞いています。また病院・施設完結型の医療・福祉から在宅も含めた地域完結型の医療・福祉に転換しようとしています。多職種連携のリーダーシップをとるマネジメントが重要になってきます。患者さんを中心とした医療の質と安全、安心・安全が大切になってきます。チーム医療の重要性です。リスクマネジメントは経営の問題でもあります。幸い武田学長、江原研究科長はこの分野の第一人者です。どうか皆様方には、この大学院での学びの中で自らのテーマを探求し、この分野におけるそれぞれの現場でのリーダーとなっていただけるよう祈念します」と励ましの言葉を贈りました。

大阪府立急性期・総合医療センターの吉岡院長

来賓代表の大阪府立急性期・総合医療センターの吉岡敏治院長来賓代表の大阪府立急性期・総合医療センターの吉岡敏治院長
ロマリンダ大学のカレン・ペンドルトン准教授ロマリンダ大学のカレン・ペンドルトン准教授
広東医学院解剖研究室の崔暁軍主任広東医学院解剖研究室の崔暁軍主任

 来賓を代表して高度専門医療、難病医療に取り組む地方独立行政法人大阪府立病院機構「大阪府立急性期・総合医療センター」の吉岡敏治院長からは、「私は救急医療が専門ですが、当初は認知されておらず苦労しました。今は救急医療には循環器内科、消化器内科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科まであらゆる診療科が関わるようになりました。医療安全はようやくこの大学院で初めて教授が認められた段階です。皆様方はその先駆者として医療安全管理学の真の学問体系を作って行って下さい。あなた方の強みは、職場の経験からさらに深めるべき自身の研究テーマをすでに持っておられる事です。働きながら研究に従事し講義を受けることは大変な負担だと思いますが、健康に留意して研究を完成させてください。
 医療は人の幸せに貢献出来る仕事であり、テクニックを必要とする職人の世界でもあります。熟達するのに年月を要する半面、日々の上達と年々の向上が自覚できる職場です。医療者のもう一つの大切な要素は人生に対する考え方と、仕事に対する思いであります。管理職になっても最後は人格が決め手となります。そのためにも少しでも質の高い時間を過ごしてください。集中して過ごす時間、良い刺激を与えてくれる人と一緒に過ごす時間、自分の能力以上のことにチャレンジしている時間のことであります。医療は人類の最高の幸せである健康の維持増進を司る究極のサービスであると同時に医療制度という中で、必然的に経済活動を強いられるという言葉を贈ります」と励ましの言葉がありました。

 また海外提携校の米国ロマリンダ大学リチャード・ハート学長からの祝福のメッセージを携えた同大学作業療法士学部のカレン・ペンドルトン准教授と19年に亘る交流を続けている中国・広東省の重点大学である広東医学院のトップ、江文冨書記の祝賀メッセージを携えた同医学院解剖研究室の崔暁軍主任からそれぞれメッセージが読み上げられました。また、来賓の紹介に続いて祝電が披露されました。

新院生代表の間宮さん宣誓「医療安全をリードする人材を目指す」

1期生の大西アイ子さんによるオリエンテーション1期生の大西アイ子さんによるオリエンテーション

 最後に、入学院生を代表して医療管理学研究科医療安全管理学専攻修士課程、間宮直子さんが宣誓を行いました。間宮さんは社会福祉法人恩賜財団「大阪府済生会吹田病院」の副看護部長で、「安全ということはどの職場でも必要。とくに褥瘡(じょくそう、床ずれ)のように高齢者にとって皮膚のトラブルはとても深刻な問題です。大学院ではその安全管理について研究を深めたい」と入学を決めたそうです。
 間宮さんは「本日この式典に参列できたことを入学生一同、心より喜んでいます。専門性豊かな先生方から指導を受けられることと同時に、看護職や臨床検査技師などの多職種で経験豊かな学友と学びあえることへの期待が高まっています。こうような恵まれた学習環境の下で、医療安全管理学及び医療安全管理学の領域としての医療経営管理学に関して卓越した能力と当該分野の研究能力を培い、医療の質・安全を率いるリーダーシップ力を持つ人材になれるよう日々研鑚します」と決意を述べました。

 またこのあと、滋慶医療科学大学院大学の1期生で一般財団法人甲南会「六甲アイランド甲南病院」医療安全対策室の看護師長を務める大西アイ子さんが勤務先の理解と協力の下に大学院での学業と病院務めを両立させた自らの学生生活をパワーポイントを使って紹介。資料の収集方法や論文の作成への道筋などを解説しながら、大学院での学問・研究が現在の仕事に生かされている点などについて報告が行われ、社会人経験の豊富な新入生たちも真剣な表情で聞き入っていました。