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「専門学校生はここまでやるのか!」製菓業界を代表する審査員から驚きの声 「第6回クープ・ジケイ」 

優勝を果たし、浮舟総長から表彰を受けるキャリナリー製菓調理大阪校/大阪キャリナリー製菓調理専門学校の井上さんと深浦さん

 人々に幸せを与えられるパティシエとしての精神を学び、スペシャリストとしての知識・技術を身につけてもらおうと、滋慶学園グループの製菓系8校の代表学生が参加する食文化教育部会(斎藤真知子部会長)主管「第6回クープ・ジケイ ドゥ ラ パティスリー」が11月8日(日)、神戸製菓専門学校を会場に行われました。今大会は、前日の仕込みを含めて2日間8時間にわたっていたこれまでの競技から、プロのスピードに近づくために、1日6時間の競技へと質的アップが図られ、学生並びに指導にあたる教員にとって、これまで以上の過酷なコンテストとなりました。

 今大会の全体テーマは「時間」、指定食材は「フルーツ」でした。各校での予選を勝ち抜いてきた2名一組の選手らは、アントルメ(ケーキ)とピエスモンテ(アメ細工)の2部門の作品づくりに挑戦。フルーツや素材の特色を活かして、食感や味わい、香りの変化を楽しめるように工夫を重ねて、各校のテーマに沿った作品作りに取り組みました。ピエスモンテでは、やけどしそうなほど熱いアメを伸ばしては丸め、花びらを作ったり、テーマの時計の長針、短針を作ったり。ピエスモンテ作品の命とも言える“ツヤ”を出すために、冷えつつあるアメの温度のタイミングを測って延ばしにかかるなど、時間との戦いの中で、イメージを膨らませ、それぞれの作品を仕上げてゆきました。

作品紹介のプレゼンに審査委員の先生方から絶賛の嵐

 学生にとっては厳しい時間との戦いでしたが、今年の選手たちには十二分の練習を重ねてきた“自信”のようなものが感じられました。ただ競技時間残り15分を過ぎて、完成させた作品をケースに納めるあたりから、大きな緊張感が漂い始めました。少しでもケースが触れれば、アメ細工が崩れ落ちるため、どのチームの表情も真剣そのもの。会場の窓越しに応援する保護者の皆さんや、学校関係者も「落ち着いて!」、と窓の手すりをつかむ手に思わず力が入りました。

  • 相談しながら製作に挑む埼玉チーム

  • 先生も窓越しに応援

  • 慎重にケースをかぶせる仙台チーム

 
 戦い終えて、選手たちが次々と会場から出てきました。どの顔もやりきった“充実感”に満ち溢れています。


戦い終えて出てきた選手に拍手とねぎらいの声がかけられた

 大きな拍手がわき起こり、選手たちは保護者の皆さんや先生方から次々と賞賛とねぎらいの声をかけられました。予選から入れると、半年から1年に及ぶ過酷なまでに自分自身を追い詰めた練習の日々。感極まり保護者や指導教官の顔を見て、涙する選手もいました。

 このあと、審査員を前にして、作品を紹介する各チームによるプレゼンテーションが行われました。エントリー順に自分たちの作品にかけた思いや、味や形、色あいの特色など、思いの丈を述べていきます。そのいずれ劣らぬ流暢で、想いのこもった堂々たる話しぶりに、見ている人たちが舌を巻くほど、今年の選手は粒が揃っていました。

審査委員はいずれも国際舞台で活躍してきたパティシエ界の第一人者

□日本洋菓子協会連合会公認技術指導副委員長で日本クープ・デュ・モンド実行委員の柳正司審査委員長
07年、09年、11年に洋菓子コンクールの最高峰と言われるクープ・デュ・モンド(ワールドカップ)国際審査委員兼日本チーム団長を務め、07年には日本チームを優勝に導き、現在、東京都洋菓子協会常務理事、同技術指導委員長などを務める。

□京都のフランス菓子店「オ・グルニエ・ドール」オーナーシェフの西原金蔵審査委員
 数々の国際コンクールで受賞後、フランスリヨン郊外の三ツ星レストラン、アランシャベルで製菓長を務め、帰国後はホテルオークラ神戸や資生堂パーラー「ロオジエ」の製菓長を経て、2001年に「オ・グルニエ・ドール」を開店するなど、日本を代表するパティシエ。

□「クラブ・デゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」関西支部副会長の林雅彦審査委員
1991年のクープ・デュ・モンド・パティスリーで日本人初のグランプリを手にしたほか、数々の世界のコンクールで受賞暦があり、「クラブ・デゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」関西支部副会長を務める。

 審査委員の先生方は、アントルメの試食を行ないながら、各チームの作品に批評を加えていきます。例年、審査員からは辛口のコメントも多々あり、その厳しさに涙する学生も過去にいましたが、今年は一転、称賛、絶賛の嵐に覆われました。

 「ここまで焼きこむとは。色が付きすぎて失敗に見えるが、計算された手法で味もすばらしい。私の菓子でもここまでは出来ないかも」
 「このリボンのツヤは素晴らしい。アメのテクニックはプロも顔負けだ」
 「このサクサク感は、プロでも簡単には出せないような食感だ」
 

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 さらに、お褒めの言葉が続きました。
 「学生だったらここまでやらなくても、もういいでしょうというレベルだ。いや、それ以上の仕事をしている。フランスのジュニアの大会に行けば、この中の何人かは上位に入れるだろう、本当にこの学園はすごいねって、審査委員同士で噂していた」
 「この出来栄えは素晴らしすぎる。(プロの面目がなくなるので、)専門学校生に作らせてはいけないね。それほど良く出来たお菓子だ。フランボワーズがテーマどおり、まず口の中に広がってきて、ピスターシュの香りがすばらしい。グラッサージュがあえてピストレにしてある素晴らしさ、シュクレの食感とか、素晴らしいバランスですごく美味しい」

 こんなに褒められたら、学生たちはテングになってしまうのではと心配するほどでしたが、先生方の称賛の言葉はなおも続きました。
 「このピエスモンテには、やられたなと思った。砂時計のパーツの一つ一つのクオリティが非常に高い。がつんとやられたなという感じだ」
 「これが8作品目の試食だが、この段階の舌の状態で口に入れたときに、しっかりと味を捕らえられるバランスは素晴らしい」
 「いつ見ても君たちのチームのテーブルの上はきちんと片付いていて、何もない。素晴らしい練習の成果、学校での教育が行われていることを感じた」

 今回初の留学生として出場した札幌ベルエポック製菓調理専門学校パティシエ科2年のマレーシア出身の李依羚さんは外国人だと思わせないような流暢な日本語でプレゼン。審査員の先生方から、「わずか1年で、よくそこまで話せるようになりましたね。日本の選手に勝るとも劣らない素晴らしいプレゼンだ」とさかんに感心されていました。

 意見としてはもちろん、「つやを出すために途中でレンジに入れたでしょう。プロの目はごまかせない」「お店ではこんなに沢山の材料を使わない」といった注意や、貴重なアドバイスもありましたが、お褒めの言葉の嵐に、ほとんどかき消されてしまう印象さえ受けました。

優勝は大阪キャリナリー 3年ぶり4回目 準優勝は”復興の青りんご”にかけた仙台


終始、笑顔で堂々と説明する神戸チーム。見事にプレゼンテーション賞を射止めた

 いずれ劣らぬ出来栄えの中、審査の結果が出ました。
発表は表彰会場で行なわれ、今回から8校の参加学校長の投票によって選ばれることになった「プレゼンテーション賞」から行なわれました。同賞には、卓越した話術と、にこやかな笑顔を絶やさなかった地元、神戸製菓専門学校の藤田有紀・松池真由子ペアが選ばれました。

 また、アントルメ賞には、「希望」というタイトルを付け、震災復興をかけて宮城県が開発した青りんご(サワールージュ)を全体に使ったケーキ作品を仕上げた仙台コミュニケーションアート専門学校、ピエスモンテ賞には、砂時計と流れ落ちる紅茶を絶妙のバランスで組み合わせたキャリナリー製菓調理大阪校/大阪キャリナリー製菓調理専門学校、審査員特別賞には福岡キャリナリー製菓調理専門学校、クープ・ジケイ特別賞には埼玉ベルエポック製菓調理専門学校がそれぞれ選ばれ、表彰を受けました。

 

  • 優勝を飾った大阪キャリナリーの作品『Luxe』。
    ピエスモンテ(アメ細工)賞も獲得した

 そして、クライマックスの準優勝、優勝の発表。「エントリーナンバー6番…」と仙台コミュニケーションアート専門学校カフェ・パティシエ科2年の渡部枝里子・三船彩香ペアが準優勝チームとしてアナウンスされると、「おおっ」と大きなどよめきが起きました。上位常連校が来るだろうという大方の予想を裏切っての仙台の躍進に対する驚きと、東北復興に頑張る同校への賞賛を込めた“声”のようでした。

 シーンと会場が固唾を呑む中、優勝校が発表されました。「優勝はキャリナリー…」と、第1回大会から3連覇後、トロフィーを手放していたキャリナリー製菓調理大阪校/大阪キャリナリー製菓調理専門学校製菓・製パン科2年の井上眞穂・製菓・調理科2年の深浦侑乃ペアがコールされると、福間幸夫学校長ら大阪の“応援団”から大きな拍手が起こり、会場中からも大きな大きな拍手がわき起こり、選手たちが壇上に上がってからも、鳴り止みませんでした。

 優勝チームには、洋菓子メーカーが集まる神戸から、兵庫県洋菓子協会賞も贈られました。

  • 準優勝を果たした仙台コミュニケーションアートの作品『希望』。”復興野菜”として宮城県が開発した青りんごを使い、アントルメ賞も受賞した

優勝の井上さん・深浦さん「将来は沢山の人に笑顔と幸せを与えるパティシエに」

 幼い頃から食べることや人を喜ばせることが大好きだったという、優勝した大阪チームの井上眞穂さんは、「これまでは途中でくじけそうな時もありましたが、本番では『もう楽しもう』と思ってやっていたら、結果がついてきました。本当に嬉しいです」。“相棒”の深浦侑乃さんは「二人で絶対に優勝しようね、って半年間、頑張ってきました。念願がかなって嬉しいです。この経験を生かして、将来は沢山の人に笑顔と幸せを与えられるようなパティシエになりたいです」と話していました。

 準優勝を獲得した仙台の渡部枝里子さんと三船彩香さんは「宮城県がオリジナルで開発した“サワールージュ”という強い酸味が特徴的なりんごにこだわったアントルメです。東北復興につながるように、ピエスモンテとあわせて、未来への「希望」を込めて作り上げました」と話していました。

優勝=テーマ「Luxe」 キャリナリー製菓調理大阪校/大阪キャリナリー製菓調理専門学校(井上眞穂、深浦侑乃)
準優勝=テーマ「希望」 仙台コミュニケーションアート専門学校(渡部枝里子、三船彩香)
ピエスモンテ賞=キャリナリー製菓調理大阪校/大阪キャリナリー製菓調理専門学校(井上眞穂、深浦侑乃)
アントルメ賞=仙台コミュニケーションアート専門学校(渡部枝里子、三船彩香)
審査員特別賞=テーマ「時を超えて未来へ」 福岡キャリナリー製菓調理専門学校(塚原慶晃、真崎千春)
プレゼンテーション賞=テーマ「Night&Day」 神戸製菓専門学校(藤田有紀、松池真由子)
クープジケイ特別賞=テーマ「Evolution」 埼玉ベルエポック製菓調理専門学校(百瀬和輝、黒川舞)と、なりました。

  • クープジケイ特別賞の埼玉ベル製菓調理の作品『Evolution』

柳委員長「プロの中でやっても通じるレベル」 林委員「誰かのために何かをしようと思う心を持って」 西原委員「今朝の緊張感を忘れないで」 

【審査講評】
 最後に審査委員、浮舟総長から講評がありました。柳委員長は、学生たちのレベルが上がり、「皆さんの素晴らしい作品を見ていたら、涙が出てきた。こういう素晴らしい学生たちを育てる職場を我々は作れるだろうか」と最高級の賛辞を述べ、「素晴らしい皆さんの未来にどんな言葉を贈ればいいのだろうか」と一瞬、言葉を詰まらせて、ハンカチを取り出す場面もありました。

柳審査委員長

 6回目を迎え、素晴らしい大会になってきた。最初の大会に比べて、技術レベルは、プロの中でやっても通じるレベルになってきた。
 メニューを考え、アイデアを出して試作を重ね、何度も壁にぶつかり、苦労をしてきた。そういう困難を乗り越えてすばらしい作品を完成できた。そこで得たものはなんでしょう。
優勝することは素晴らしいことだが、それ以上に大事なことは、壁を乗り越えるために何ヶ月も頑張ってきたことだと思う。これから社会に出て職場に入ると大変なことがある。そんなときに大事なことは、続ける心を持つことです。そのためにも、日々の仕事は計量であったり、パーツ作りかもしれないが、その中で、楽しみを見つけ、お客様に喜んでもらえるにはどうすればいいか、最高のクオリティを求めて欲しい。
 また、皆さんのために、毎年大会に向けて準備する先生方は大変です。そういうことをやってもらえる学校の環境を良く味わっていただきたい。

  • 審査員特別賞に入った福岡キャリナリーの作品『時を超えて未来へ』

林審査委員

 大事なことは、結果を出すために半年、1年と努力をしてきたことだ。結果が出た人、残念ながら出なかった人がいるが、努力を重ねてきたこの期間が一番自分のこやしになる。お店に入っても、この1年間のことを絶対に忘れずに、目標を持ち続けて欲しい。目標を見失った時点で、人の成長は止まる。誰かのために何かをしようと思う心を持って、お店から、社会から必要とされる人材になってください。
 この中から世界に羽ばたけるパティシエが出てくることを期待します。

  • プレゼンテーション賞を取った神戸製菓の作品『Night&Day』

西原審査委員

 素晴らしい仕事を見せてもらい、感動している。テーマは時間だったが、私は今61歳。皆さんと同じように若かった1970年代にフランスに行って、いろんなコンクールに挑戦したが、その日の朝は緊張したものだ。ぜひ、今日の朝の緊張を忘れないで欲しい。コンクールに出れたことを喜んで欲しい。それを励みに日々、努力し、世界で活躍できるパティシエに育って欲しい。

浮舟総長「回を重ねて、素晴らしいコンテストに育ってきた」

 

滋慶学園グループの浮舟邦彦総長

 表彰式後の閉会あいさつで浮舟総長は「国際的に活躍されている素晴らしい先生方を審査員にお迎えし、今回でこのコンテストも6回目と回を重ねてきました。続けることによって、素晴らしい大会に育ってきたと実感しています。学校の関係者の方々は最後の1、2分、ハラハラされていましたが、選手の皆さんは楽しんでおられるようでした。練習の賜物だと思います。まるで計算しつくしているかのように、時間どおりに完成されていました。審査員の先生方も仰っていますが、大会のレベルは間違いなく上がり、本当に素晴らしいレベルになっていると実感しました。食文化教育部会をはじめ、各校の講師や教務の先生方、スタッフの皆さまのご努力に心から感謝します」と、述べました。

 表彰式の後は、全員で記念撮影を行い、そのあと、懇親会で交流を深めました。来年は、東京ベルエポック製菓調理専門学校を会場に第7回大会が開催される予定です。