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コロナ下の「第20回職業体験セミナー」 約10日間にわたり中学・高校で“出前授業による職業体験”を行いました

京都医健のスポーツトレーナーの授業では足首のテーピングを体験

 様々な職業を高校生や中学生の皆さんに知ってもらう「第20回職業体験セミナー」(大阪府教育委員会など後援)が、12月7日(火)から18日(金)までの約10日間、大阪府内の中学校・高校など13カ所で分散して開催されました。職業人教育を担う滋慶学園グループが中心となって構成する実行委員会が毎年12月に行っている社会貢献事業です。

 例年はエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)に1日3000人以上の中学生・高校生が集まり、アイドルグループの歌や踊りで賑わう中、ウエディングドレスの試着や動物飼育、看護師、救急救命士など70以上もの職種のブースを参加者が自由に回る形で開催してきました。しかし今回は新型コロナウイルスの感染防止のため、府立体育館での開催を自粛。グループの専門学校をはじめ、大阪府警や自衛隊、大阪府木材連合会などのプロの先生が希望する学校に出向く“出前授業による職業体験”として行いました。期間中、紹介した職業は計44職種にのぼります。

 出前授業の初日は、大阪市城東区の市立蒲生中学校で行われました。2年生約230人を対象に、あらかじめ生徒の希望をとる方法で、一つの職種に集中しないよう配慮。京都医健専門学校や大阪ハイテクノロジー専門学校などの11職種の授業を、生徒一人が2つずつ受講できるようにしました。

逃げ得は許さない!という正義感を学びました 大阪府警による見当たり捜査体験

 大阪府警察本部による今回初めての「見当たり捜査」の体験授業が行われました。コロナ禍とあって、大阪市中央区島之内の滋慶学園本部ビルと中学校をつなぎZoomによる授業となりました。

 「見当たり捜査」は、指名手配犯の顔写真の特徴を頭に刷り込み、繁華街の雑踏の中でいつ現れるかわからない犯人を見つけ出すという地道な捜査手法です。昭和53年に大阪府警の捜査員が街で、たまたま顔を覚えていた沖縄県警からの指名手配中の被疑者を発見。検挙に至ったことが始まりです。

 「こうした捜査手法は代々受け継がれ、大阪府警ではこれまで4000人以上を逮捕。誤認逮捕は一件もありません」と警察のスペシャリストが解説しました。捜査員は家を出たときから捜査が始まり、道ゆく人の顔を見て、記憶している容疑者の顔かどうか瞬時に判断します。そのさい、目の形やホクロの場所などを確認することがポイントだそうです。

  • 目の形を頭に刻む“見当たり捜査”の体験 

  • 警察官の正義感も学びました

 生徒たちも見当たり捜査を体験しました。人の目だけがモニターに映し出され、30秒間で記憶。その後、複数の人の顔全体が映し出され、最初の目だけの人物を当てるなどという内容です。生徒たちは授業を通じ、1枚の顔写真に執念をかけ、何万歩も歩いて犯人を追う捜査員の情熱と、「逃げ得は許さない!」という正義感を学んだようです。

“好き”を仕事にするキャリア教育 ドッグトレーナー、美容師、声優…

 美容師の教室では、京都医健専門学校の金岡怜先生が「将来、自分のやりたい仕事を見つけるためには、いろんな職種を知ろうと積極的に行動することが大切です」と語りかけました。

 生徒一人ひとりにマネキンが用意され、髪を水で濡らしてクシで整える作業や、髪にパーマをかけるためカーリングロッドで巻くワインディングの技術について説明。「皆さんに体験してもらうワインディングは、美容師国家試験の実技の課題になります」と話していました。

  • ワイディングの技術を学びました

  • ドッグトレーナーを体験 

 ドッグトレーナーの体験は、大阪ECO動物海洋専門学校の和田將吾先生が担当。人のサポートをする補助犬や警察犬、家庭のペット犬などのトレーニングから健康管理、しつけなどを行う仕事について説明しました。ペットが好きな人ならではの仕事です。希望する生徒に、犬と遊んだりエサをあげたりする体験をしてもらいました。

 「今、声優に求められているものは何だと思いますか?」。声優の教室では、大阪アニメ・声優&eスポーツ専門学校の佐藤遥先生がこんな問いかけをして、生徒たちに考えてもらっていました。

 かつて声優は、場面に応じた声の仕事がメインでしたが、今は人間性や演技力が求められています。仕事の幅も広がり、アニメーションの声や外国映画の吹き替えのほか、CMやナレーション、雑誌のモデル、舞台、俳優、歌手、Youtuberなど多岐に広がっていることを、生徒たちは理解しました。さらに生徒たちは台本をもとに、アニメに台詞を当てるアテレコの体験をしました。

  • 声優の仕事に何があるか、考えました 

  • 顔の描き方を指導する大場先生

 マンガ家・イラストレーターの仕事について講義をしたのは、コミック・アーティスト(漫画家)で、大阪アニメ・声優&eスポーツ専門学校の特別講師、大場義弘先生です。

 先生ご自身の体験を語りながら、マンガやイラストレーターの仕事について解説しました。そのうえで基本的な顔の形や、少し見上げるような感じのあおり顔、横顔などの描き方を実際に描いてもらいながら指導。遠近法についても黒板に描いて説明していました。

健康を支援する仕事を体験 スポーツトレーナー、診療放射線技師、作業療法士…

 京都医健専門学校の平岡義光先生は、スポーツトレーナーの役割について解説。「競技力向上」のためには、ウエイトトレーニングや、体幹トレーニング、アジリティ(敏しょう性)のトレーニングがあります。

 また「競技復帰」としてリハビリテーション、そして「傷害予防」のためのストレッチやテーピング、ウォーミングアップなどがあることを示しました。 さらに、テーピングの基本的なやり方を指導し、受講生全員が足首のテープを巻いて保護する体験をしました。
 このほか、同じ京都医健の浅見友哉先生は、スポーツや美容の世界でいま注目されている鍼灸師の仕事に関する授業を、稲原健輔先生は理学療法士の仕事として、リハビリテーションの体験を行いました。

  • スポーツトレーナーの仕事

  • DNAを取り出し観察する体験も

 バイオ技術者の教室では、大阪ハイテクテクノロジー専門学校の矢野昌人先生の指導で、生徒たちが自分の口の中の細胞からDNAを取り出し、観察する体験をしました。コップの水を口に含みながら、唇や頬の内側を歯で擦って細胞を採取し、コップに口の水を戻す、界面活性剤などの溶液を加えて混ぜる、などの手順をふんで、最後にDNAを析出しました。

 同じく大阪ハイテクノロジー専門学校の櫻井玲(あきら)先生は放射線技師の仕事について講義。大きな磁石による強い磁場とある種の電波で画像を得るMRIと、放射線の一種であるX線を人体に照射し、組織を通過する量の違いを画像として表示するX線検査の違いについて、生徒たちにわかりやすく説明をしていました。

  • 放射線技師の仕事を解説する櫻井先生

  • 作業療法を体験する生徒たち

 作業療法士の仕事については、大阪医療福祉専門学校の椿原一郎先生が講義をしました。この仕事は入浴や食事など生活上必要不可欠な動作から、家事や仕事・趣味など日常のあらゆる活動を通じ、自立した生活へ導くリハビリテーョンのプロフェッショナルです。作業療法士は身体障がい者や高齢者、子どもだけでなく、精神障がい者も対象にしていることを分かり易く説明しました。

 作業療法について学んだ生徒たちは、実際にレザークラフトを通じた作業療法として、木槌で皮革の帯に文字を刻印していく作業を体験しました。

大阪府内の13校で、約1600人の生徒が多くの仕事を体験

今回の職業体験セミナーでは、大阪府内の中学校を中心に、私立高校や登校したくても学校に行けない生徒の教室など計13校で、約1600人の生徒たちが社会の様々な仕事を体験しました。

  • 救急救命士の仕事を学びます

  • 歯科技工士の仕事を学ぶ生徒たち

 

 18日までの期間中、医療・福祉関係では、東洋医療専門学校が救急救命士や柔道整復師など、大阪医療技術学園専門学校は臨床検査技師や言語聴覚士、新大阪歯科技工士専門学校は歯科技工士、新大阪歯科衛生士専門学校は歯科衛生士、大阪医療看護専門学校は看護師など、大阪保健福祉専門学校は保育士・幼稚園教諭、介護福祉士など、大阪医療福祉専門学校は視能訓練士、医療事務など、神戸医療福祉専門学校三田校は義肢装具士、理学療法士などの体験授業を行いました。

 またサービス・エンターテインメント関連では、大阪ウエディング&ホテル・IR専門学校がホテルマンとブライダルの授業、大阪キャリナリー製菓調理専門学校はラテアートの体験、神戸製菓専門学校はマジパン細工の体験、大阪スクールオブミュージック専門学校はボーカリスト、大阪ダンス&アクターズ専門学校はダンサー、OCA大阪デザイン&IT専門学校は缶バッジ制作の体験授業をそれぞれ提供。

 滋慶学園グループ以外からは、中央工学校OSAKAが参加協力。空間演出をするインテリアコーディネーターの授業を行いました。

 

 また大阪府警察本部の「見当たり捜査」のオンライン授業は、5つの学校で12コマも行われるほど人気を集めたほか、自衛隊大阪地方協力本部の自衛官の授業もありました。滋慶学園グループのサポート企業である(株)ブレーンスタッフコンサルタンツのスタッフはWebデザイナーの仕事について講義。生徒たちは興味津々でした。

  • 災害時の人命救助は自衛官の大切な任務

  • 木造の建物の良さについても学びました

 ユニークだったのは、木材業界団体の大阪府木材連合会特別顧問で、京都大学生存圏研究所の川井秀一特別教授の大工さんの授業。スギやヒノキの木材のサンプルを用意し、癒しの効果や調湿性など木造の建物の特長をはじめ、日本の木造建築の歴史をわかりやすく説明し、木材を扱う大工の仕事の意義について語っていました。

 今回の職業体験セミナーは、実行委員会の藤谷富基委員長(神戸製菓専門学校)や下拂(しもばらい)ー樹副委員長(大阪ウェディング&ホテル・IR専門学校)らが中心になって計画。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、例年のような府立体育館での開催ではなく、分散型の出前授業の形で12月に実施することを決め、7月から講師の選定や希望する中学・高校との調整などの準備をしてきました。