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アジアで初めてリカルドエステシアを恐竜課程の学生らが発見 9000万年前の久慈玉川層 多様な肉食恐竜の化石出土は国内初 久慈琥珀博物館・早稲田大学・TCA東京ECO動物海洋専門学校の合同チーム

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    恐竜・自然史博物専攻2年の石賀大登さんが発見したリカルドエステシア類の歯化石。今回見つかったリカルドエステシアはアジアで初めて

  • リカルドステイシア

    リカルドエステシア・ギルモレイの想像図(小田隆氏)。体長は尾も含めて2m前後と推測される

 久慈琥珀博物館(岩手県久慈市 新田久男館長)と早稲田大学国際学術院の平山廉教授、並びにTCA東京ECO動物海洋専門学校(恐竜・自然史博物専攻)は7月9日(金)、東京都江戸川区の同専門学校第3校舎DINOSAUR MUSEUMで共同記者会見を行い、岩手県久慈市小久慈町の同博物館内にある琥珀採掘体験場と隣接の発掘調査地における約9000万年前の白亜紀後期の久慈層群玉川層から、「ティラノサウルス属、リカルドエステシア属、パロニコドン属など4種類の獣脚類(肉食恐竜)の歯化石6点を発見した」と発表しました。

「白亜紀後期に豊かな生態系が存在した証」 早大の平山教授ら

平山教授 日本で初めて白亜紀後期の久慈層群玉川層から見つかった肉食恐竜の歯化石について解説する早稲田大学の平山教授

 5年の間に同じ地層から4種類6点もの多様な肉食恐竜の歯化石が発見されたのは国内で初めてのケースです。発表には久慈市の遠藤譲一市長をはじめ、平山教授、新田館長、そしてTCA東京ECO動物海洋専門学校からDINOSAUR MUSEUM館長でもある江口仁詞副校長と恐竜・自然史博物専攻(恐竜&レプタイルズ専攻)2年の石賀大登さんが出席しました。
 早稲田大学の平山廉教授らは「同一地層から多様な獣脚類(肉食恐竜)の化石が見つかったケースは国内初だと思う。リカルドエステシアとパロニコドンは北米などで発見されているが、国内では初めて。リカルドエステシアはアジアでも報告はない。発掘地ではこれまで30種類約2200点もの脊椎動物の化石が見つかっており、新たな発見で9000万年前の久慈一帯は熱帯下にあって食物連鎖の頂点にいる多くの肉食恐竜が活動できるほど豊かな生態系や自然環境にあったことが想像できる」と今回の発見の意義と今後の発掘調査への期待について語りました。

恐竜・自然史博物専攻2年の石賀大登さんがお手柄

 また今回アジアで初めて見つかった肉食恐竜のリカルドエステシア・ギルモレイの貴重な歯化石の一つは、同専門学校の恐竜・自然史博物専攻の2年、石賀大登さんが1年生の3月に発見したものです。昨年8月に愛媛大学大学院生(当時)の町田悠輔さんが見つけた歯化石もリカルドエステシア・ギルモレイのものと判明、同玉川層から見つかっているリカルドエステシア・イソスケレスと合わせた2種類4点のリカルドエステシアは、国内はもちろん、アジアで初めての発見であることが分かりました。また昨年8月に発見されたパロニコドンも国内で初めての発見となる古生物学上の快挙です。

今回新たな発見として発表された肉食恐竜の歯化石

1.ティラノサウルス類1点
発見場所 琥珀採掘体験場
発 見 日 2018年6月24日
発 見 者 門口 裕基さん(当時高校生)
主な特徴 歯の断面はティラノサウルス類の前上顎骨歯に特有のD字型を呈する。切縁に鋸歯(きょし:ノコギリの歯状の細かい凹凸)はない。体長3mほどだったと推定される。

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    ティラノサウルス類の歯化石

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    リカルドエステシア・ギルモレイの歯化石

2.リカルドエステシア・ギルモレイ類2点(アジア初)
①リカルドエステシア・ギルモレイ
発見場所 小久慈町発掘調査地
発 見 日 2020年8月17日
発 見 者 町田 悠輔さん(愛媛大学大学院生)
主な特徴 細かい鋸歯が発達する。歯の湾曲が大きい。

②リカルドエステシア・ギルモレイ
発見場所 小久慈町発掘調査地
発 見 日 2021年3月25日
発 見 者 石賀 大登さん(TCA東京エコ動物海洋専門学校生)
主な特徴 細かい鋸歯が発達する。歯の湾曲が大きい。

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    石賀さんが発見したリカルドエステシア・ギルモレイの歯化石。肉食恐竜の特色である鋸歯が発達している

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    リカルドエステシア・イソスケレスの歯化石(アジア初)

3.リカルドエステシア・イソスケレス類2点(アジア初)
①リカルドエステシア・イソスケレス
発見場所 小久慈町発掘調査地
発 見 日 2016年3月25日
発 見 者 リナルディ・ナタニエル(当時、早稲田大学4年生)
主な特徴 鋸歯はない。歯の湾曲が小さい。
②リカルドエステシア・イソスケレス
発見場所 小久慈町発掘調査地
発 見 日 2021年3月26日
発 見 者 榊 帆希さん(当時、東京大学大学院生)
主な特徴 鋸歯はない。歯の湾曲が小さい。

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    リカルドエステシア・イソスケレスの歯化石

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    国内初のパロニコドンの歯化石

4.パロニコドン1点(国内初)
発見場所 小久慈町発掘調査地
発 見 日 2020年8月26日
発 見 者 山口 喜博さん(帝京平成大学名誉教授)
主な特徴 鋸歯はない。歯の表面に複数のリッジ(隆起)が発達する。

  • ティラノサウルス

    ティラノサウルスの想像図(小田隆氏)

  • 地図

    4種類6点もの肉食恐竜の歯化石が見つかった久慈市を示す地図

30種類、約2200点の脊椎動物化石が発見

市長会見冒頭、挨拶される久慈市の遠藤市長

 この日の記者発表の冒頭、遠藤市長が挨拶された中にもありましたが、今回、歯化石が発見された久慈琥珀博物館の周辺は、重さ約3㎏に達する琥珀が採掘されるなど、琥珀と恐竜時代の化石が眠る貴重な場所で、「琥珀と恐竜の大地・久慈」と謳われる地域です。市の強力な支援があっての新発見でした。

 2012年3月から同博物館と早稲田大学の平山廉教授による発掘調査が約9000万年前白亜紀後期の玉川層のボーンベッドと称される化石凝集層で行われ、これまでに体長20m級の大型植物食恐竜(竜脚類)やティラノサウルスなどの肉食恐竜(獣脚類)、カメ類、ワニ類、サメ類など30種類、約2200点の脊椎動物化石が発見されています。これほど多くの化石が見つかった例は他の地域で類をみないと言います。

「共同発表への参加 恐竜・自然史博物専攻課程の門出に華を添えて頂いた」 江口副校長

 TCA東京ECO動物海洋専門学校では昨年4月に恐竜・自然史博物専攻課程を新設。その準備のために江口副校長が平山教授を訪ねたことから、同副校長も2年前から発掘調査に参加してきました。江口副校長は新入生とともに同博物館の実習授業に出かけたり、日本を代表するような専門の研究者らが参加する発掘調査に学生たちも参加できるようにと布袋に入れた久慈の土を分けてもらって大量に学校に持ち帰り、学生に土から化石を取り出すためのフィールドワークの訓練などを行ってきました。
 そして今年の3月、本格的な発掘調査への参加者を募ったところ、石賀さんが手を挙げ、江口先生と共に現地入りし、石賀さんが大発見のラッキーボーイとなりました。

  • 江口先生

    記者会見に臨む江口副校長

  • 恐竜校舎2

    会見場となった恐竜校舎DINOSAUR MUSEUM

  • ティラノサウルス

    TCAエコのDINOSAUR MUSEUMに展示されたティラノサウルスの頭

  • アクロカントサウルス2

    同じく展示されている巨大なアクロカントサウルスの骨格

「のび太になった気分です!」 石賀さんが会見で改めて新発見の喜びを語りました

 この日の会見で江口先生から「運もあったかもしれませんが、自主的なトレーニングの成果でもあったと思います。新学科の発足や学校内に新しく完成した恐竜のミュージアムにも華を添えていただいた気がします」と前置きされて会見に臨んだ石賀さん。
 「最初はまたサメの歯かなと落ち込んでいました。江口先生に見せると“ん?” ”もしかして…”と反応され、すぐに平山先生に見せられました。すると平山先生が“恐竜だ!”と大声で叫ばれ、周囲の人達が騒然となったのを覚えています」と発見時の興奮ぶりを紹介。記者席から年齢や心境などを聞かれると、あと数日で20歳の誕生日を迎えると明かした石賀さんは「(恐竜と出会った)ドラえもんののび太になった気分です。恐竜が好きなので本当に夢が叶いました。この喜びを同級生や後輩に伝えられたら嬉しいです」と会見の主役になって、嬉しげでした。堂々とした受け答えに、記者席から「のび太というよりジャイアンじゃないの」と冷やかされる場面もありました。

  • 石賀さん
    自分の発見したリカルドエステシア・ギルモレイの歯化石の実物を示す石賀さん。右手に持っているのは拡大したレプリカ

  • 石賀さん 発掘時

    新発見した時の記念写真。右が岩石に埋まった歯化石

 石賀さんは8月に同博物館で研修を受けることが決まっており、夏休みに同館を訪れる小学生たちに今回の発見の喜びを語ることになっています。8月に行われる発掘作業にも参加する予定で、今回見つけた歯化石の先端がわずかに欠けているので、ぜひその先端部分を見つけたいと張り切っています。江口先生も「先端が見つかれば、さらに詳しく種類などを見極められると思います」と期待を寄せていました。

 記者会見は新田館長の進行で行われ、リアルとオンラインで東北地方のメディアも含み多くのマスコミや専門誌の記者の皆さんが参加されました。

 発掘された化石類は、久慈琥珀博物館の特別展で9月26日まで一般公開されます。開館は午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)。入館料は高校生以上500円、小中学生200円。問い合わせは同館(0194・59・3831)へ。