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「第5回アジア臨床工学フォーラム」を開催 学校法人大阪滋慶学園 滋慶医療科学大学などが“情報科学発展と医療安全への貢献”をテーマに主催 コロナ下における臨床工学技士の活躍や途上国の様子も報告されました

2021.12.23

シンポジウム

臨床工学の未来を考える「第5回アジア臨床工学フォーラム」(学校法人大阪滋慶学園、滋慶医療科学大学など主催)。コロナ下における臨床工学などが報告されました

 体外式膜型人工肺ECMO(エクモ)などの操作で臨床工学技士が注目される中、臨床工学の未来を考える「第5回アジア臨床工学フォーラム」が11月6日(土)、「アジア臨床工学の“情報科学発展と医療安全への貢献”」をテーマに、新大阪のホテルを主会場として各国とオンラインでつないで開催されました。
 学校法人大阪滋慶学園と滋慶医療科学大学・同大学院、アジア職業人材養成センターが主催、中国医師協会と中華医学会、広東医科大学、上海中医薬大学、上海健康医学院、深圳職業技術学院、広東薬科大学が共催、文部科学省や大阪府、公益社団法人日本工学技士会など15団体の後援を頂きました。
 同フォーラムは、日本で初めて「医療の安全」を探求する大学院である滋慶医療科学大学院大学(現、滋慶医療科学大学大学院)の開設を記念して、2012年4月に第1回目を開催。以来、中国での2度の開催と2019年11月の東京開催を経て、今回、滋慶医療科学大学の開学を記念しての開催となりました。

アジア7か国が参加 コロナ下での現状や課題を報告

 日本と中国をはじめ、バングラデッシュ、ネパール、タイ、ミャンマー、台湾の7か国・地域の臨床工学関係者や学生らが会場とオンラインに別れて参加。5人の先生方による講演と、各国代表が参加する3つのパネルディスカッション・シンポジウムが行われました。
 
 講演では、日本の先生方から、臨床工学技士法が30数年ぶりに改正され、2021年10月からの施行によって、これまで医師がおこなっていた臨床業務の一部を臨床工学技士が引き受けることになったことや、コロナ下でのECMO(エクモ)の操作など臨床工学技士の存在感が高まったこと、アジアに向けて医療機器に関する支援や臨床工学人材の育成支援に乗り出しているが、コロナのために、一時中断を余儀なくされている状況などが報告されました。
 
 中国からは、情報工学をとり入れた臨床工学の発展や、大学での人材育成への取り組みなどが紹介されました。「新型コロナで臨床工学技士が活躍し、注目された」、「医療機器の開発などができるイノベーション力のある臨床工学技士の育成に取り組んでいる」といった報告がありました。

 またシンポジウムやフォーラムでは、コロナ禍の中、参加各国に於ける臨床工学の現状や課題、将来展望などが報告されました。ミャンマーやバングラデシュなど途上国からは、まだまだ未整備な状態にある臨床工学をいかに確立していくか努力している姿や、急激な透析患者の増加や医療機器の不足・不備に加えて、臨床工学人材が不足するなど、コロナ下で厳しい状況にあることなどが報告され、日本の臨床工学に協力の強化を求める切実な声が寄せられました。

浮舟総長が主催者を代表してあいさつ

総長実行委員会委員長としてあいさつする浮舟邦彦総長

 冒頭、主催者を代表して実行委員会委員長である滋慶学園グループの浮舟邦彦総長があいさつ。「高齢化やAI、ICTなど医療機器の急激な進展に伴い、アジアにおける臨床工学技士人材の育成は国を越えた重要な共通課題となっています。アジア各国が抱える課題解決や連携・協力に向けて大いに意見を交わしていただきたい」と述べました。

 次いで、日本と中国の臨床工学をリードする公益財団法人医療機器センターの菊地眞理事長と中国医師協会臨床工程師分会の夏慧琳常務委員兼総幹事長による招聘講演2題、一般財団法人臨床工学国際推進財団の川崎忠行理事長による特別講演が行われました。
 
 講師の先生方による講演要旨は次の通りです。

【招聘講演Ⅰ】 テーマ:「臨床工学技士国家試験の発展と変遷」

菊地 眞先生(公益財団法人医療機器センター理事長)

菊地眞氏招聘講演を行う公益財団法人医療機器センター理事長の菊地眞先生

 日本の臨床工学技士は世界で唯一、国が定める国家医療職となっている。その国家試験を国の委託を受けて実施しているのが当センターである。第35回国家試験を来年3月第1日曜日に行うが、国家試験の初期は特例措置期間だったが、第7回から養成学校の卒業生でないと受験資格が与えられない仕組みとなった。前回第34回の受験者数は2,652名で増加傾向にある。試験問題は合格率80%の水準を目途に作成、出題基準は内科系、外科系を含め、臨床工学技士として知っておくべき知識となっている。
 医学・医療の進歩が速く、高度化しており、免許取得をスタートに常に研鑽を積む必要がある。今後、求められる業務も大きく変化し、医師の過重労働に伴うタスクシフトが問題となる。サイバーセキュリティへの対応も学ばなければならない。医療チームの一員として、世界のどの国でも臨床工学技士は必要になるだろう。かつて国際生体ME学会(ICMBE)の会長を務めたが、アメリカは州ごとに制度を決めている。アメリカ以外の国で臨床工学技士をどのような資格者として認めていくのか、今後議論され、間違いなく法制化されていくものと期待している。

【招聘講演Ⅱ】 テーマ:「中国臨床工学技士の発展と人材育成へ」

夏 慧琳先生(中国医師協会臨床工程師分会常務委員/総幹事長)

 2020年の全国的な臨床工程師職業発展調査の報告書が完成した。臨床工学技士であるME(Medical Engineer)とCE(Clinical Engineer)は、中国でも職業として重要視している。調査は全国の2、3級の公立病院1400を対象に実施、4500人の臨床工学技士が協力してくれた。報告は5章からなる。
 医療機器の規定で最も重要なのは今年3月に発行した「医療機械臨床使用管理便法」である。中国では臨床工学技士の職務、業務が変化している。50年代から60年代は医療機械の調達・供給、90年代になって医療機械のリスク管理が業務に入り、2010年以降は、技術の評価や質のチェック、コントロールが含まれるようになった。

夏慧琳氏招聘講演を行う中国医師協会臨床工程師分会の夏慧琳常務委員兼総幹事長

 人材育成だが、60年に上海医療機械高等専科学校を設立。1977年、初めてのバイオ医学専攻が浙江大学に設立された。2015年には上海健康医学院に臨床医学工学専攻を設立。今では170の高等教育機関がバイオ医学工学専攻を設置している。
 この調査の結果、臨床工学技士は大型病院で1病院あたり約15人、その下の2級病院で約6人いるが、日本に比べてまだCEは多くない。中心業務はメンテナンスにある。保守やクオリティチェックといった予防型まで来ていない。一部の病院では臨床工学技士の仕事の一部がアウトソーシングされ、臨床工学技士の数が減っている。医療の安全、医療の質に影響をもたらす恐れがあるかもしれない。

 臨床工学技士の最終学歴をみると、4年制大学が最も多くて56%、修士・博士が9.6%、年齢別では26歳~35歳層が33%と最も多い。
 中国が抱えている問題として、高等教育としての方向性が定まっていないことや、臨床工学技士が診療に関わることがまだ少ないことなどがある。一方、進展もあった。例えば新型コロナで臨床工学技士が活躍した。医者の頼りになる助手として対策にあたり、注目を集めている。
 今後の展望として、日本の立法活動を参考に、中国でも資格試験や関連の法制などを整備していこうとしている。2番目として臨床工学技士の役職を整備し、医療職の体系を作っていく。2005年から臨床工学技士に対する試験を実施し、全国14の省で普及している。国の支援も必要だ。3番目として高等教育の方向性を明確にしていく等々がある。各国のCEとの交流、また協力にも期待している。そして医療を安全に確かなものにしていきたいと思う。

【特別講演】 テーマ:「アジア臨床工学のグローバル化と医療安全への貢献」

川崎忠行先生 (一般財団法人臨床工学国際推進財団 理事長)

 

川崎忠行氏アジア各国への臨床工学分野の支援などについて講演する臨床工学国際推進財団の川崎理事長

 2015年、世界で初めて11カ国から参加して臨床工学の国際学会が中国・広州で開かれた。日本の臨床工学技士会も参加し、国家試験として存在する組織は日本が世界で唯一だと紹介した。診療報酬がつくなど技術評価もきちんとしている点で、アメリカの先生方からも注目された。
 臨床工学技士会に国際交流委員会を作って、AAMI(米国の学会)での発表や中国工程師会との連携、透析液清浄化に関する国際標準化機構(ISO)会議への参加などを経て、臨床工学国際推進財団を設立。世界に唯一の日本の臨床工学制度やチーム医療について世界に普及活動を続けている。

 中国とは血液浄化技術交流を行ってきた。日本の透析患者は30万人だが、中国では透析患者は70万人いる。実態はもっと多いと言われている。中国は200床、300床の病院で透析患者を診ているが、日本はクリニック対応で大きな差だと感じている。上海や北京の病院の顧問として日本のシステムを構築してきたが、最近は西安など内陸部との交流や、上海健康学院に最先端の模擬透析室を設置する協力などを行っている。年間4、5回の交流をしてきたが、今はコロナでストップしている。
 ミャンマーなど新興国への臨床工学人材の育成支援なども行っている。日本の血液ポンプの使い方の指導をしたが、日本語のマニュアルしかなく、現地の人は使えない状況だ。2018年から5年間の予定で、国立ヤンゴン医療技術大学でJICAとともにメディカルエンジニア育成体制強化プロジェクトを実施している。人材育成の前にドレーンが倉庫に山積みになっていた。まずそれをきちんと管理しようと、MEコースの大学卒を対象に1年のディプロマコースで対応している。その中から教員を養成し、次の人材の養成に当たらせ、それを循環していこうと取り組んでおり、年間予算もついている。大学生の8割~9割は女性だ。このほか、インドネシアやフィリピン(マグサイサイ大学)でも人材育成に取り組んでいる。
 途上国ではマンパワーが不足し、かつ日本の医療機器の評判がいい。メーカーごとに対応してきたが、対応に差があるため、途上国に日本のメーカー複数社で医療機器センターを作り、人材育成を臨床工学技士会、財団で調整する案を経産省に提案している。その国の大学にシラバスやカリキュラムを提供、日本人講師や先生を派遣する形も提案している。これもコロナで止まっている。グローバリゼーションのなかで、臨床工学技士が医療の安全安心に寄与することは間違いない。それをいかに進めるか、臨床工学技士会と推進財団の役割だと考えている。

 次いで、臨床工学技士を育成する立場から公益社団法人日本臨床工学技士会 理事長の本間崇先生と中国首都医科大学生物医学工程学院院長の張旭先生が教育講演2題を行いました。

 各講師先生による講演要旨は次の通りです。

【教育講演Ⅰ】 テーマ:日本における臨床工学技士の新しい変化と発展

本間 崇先生 (公益社団法人日本臨床工学技士会 理事長)

本間氏 左日本臨床工学技士会 の本間理事長

 国際支援として臨床工学国際推進財団と共に努力している。
 臨床工学技士の養成校は全国に87施設あり、4096名の定員枠となっている。  
 日本臨床工学技士会の会員は11月2日現在、2万2765人。右肩上がりに増えているが、新規加入者は少子化の影響で微減傾向にある。女性会員は26%で、もっと女性を増やさなければいけないと考えている。年齢別では25歳から44歳が約65%を占め、若い世代が多い集団といえる。
 2019年秋に会員に対するアンケート調査を実施した。コロナ下の病院でどういう業務についたかも聞いている。調査の結果、血液浄化業務が最も多く47.4%で2位が保守点検管理業務(9.7%)、3位が心・血管カテーテル業務(8.2%)だった。手術領域や人工心肺など計10業務が報告された。一人当たり2.7種類の専任業務を行っていた。

 本日の本題だが、医師の労働時間の短縮、健康確保の要請を受けて、臨床工学技士へのタスクシフトのために法改正が行われた。2021年の10月に施行されたばかりである。
 今回の法改正によって、「静脈路を確保し、薬液を投与して、抜針して止血する」、「心・血管カテーテルにおける電気的負荷」、それから「内視鏡用の医療カメラの保持・操作」が臨床工学技士の仕事として認められた。医療カメラは生命維持管理装置ではないということだったので、今回法律が改正された経緯がある。あと別個に動脈表在化穿刺を認めることになった。
 実施には、厚生労働大臣指定研修の受講が必要となる(講義20時間+実技2日間程度)。すでに研修は東京で始まっている。これを受けないで新業務を行うと法律違反になる。認められた新たな6業務は、①静脈路確保、②薬液投薬、③抜針、止血、④表在化動脈への穿刺,⑤心・血管カテーテル治療時の電気的負荷、⑥内視鏡外科手術における硬性鏡保持である。なお、現行法令下で行える13業務のうち、11番目の「超音波診断装置を使用した確認」については、超音波診断装置は生命維持管理装置でないが侵襲性が少ないということで、現行制度下でやっていい業務として整理された。
 これに伴って、養成課程におけるカリキュラムが変更になる。変更内容は来年の3月頃に出る予定だ。基礎分野、専門基礎分野、専門分野、合わせて現行93単位から101単位になる見込みだ。今回の大きな目玉として、臨床基礎分野に「在宅医療」、「地域包括ケアシステム」などへの理解が加わり、8単位が9単位になる。2023年度入学生から適用される。我々も今、在宅医療についてどうあるべきかを検討しているところだ。本日会場にいる学生さんは従来の93単位のままだが、タスクシフトのための研修は受けなければならない。
 社会貢献として、新型コロナウイルス感染症に対して様々な指針を出し、会員への啓発をおこなってきた。ワクチン接種についても、「ワクチンの希釈及びシリンジへの充填や接種後の状態観察への協力」要請があった。
 臨床工学技士の法制定から34年の本年、新たな臨床工学技士法の道が開かれた。タスクシフトによる業務拡大や安全な医療機器の提供、さらに新しいカリキュラムの見直しによって、より質の高いCEの輩出が期待できると考える。

【教育講演Ⅱ】 「首都医科大学における生物医学工程の教育と病院臨床工学との連携」

張 旭 先生 (中国首都医科大学生物医学工程学院 院長)

張旭先生イノベーション型の臨床工学人材の育成プログラムなどについて紹介する首都医科大学生物医学工程学院の張院長

 首都医科大学は1960年に設立された北京の重点大学である。
 バイオ工学人材について、能力アップを図りイノベーション型人材の育成をめざしている。臨床工学は当初、保守・メンテナンスだったが、今は予防やIT・AI分野にも広がり、スマート化へ発展を遂げている。医療サービスへの期待が高まっており、医学と工学の教育を融合させ、新しい工学科、新しい医療科の建設が必要となっている。
 人材育成も重要となっている。新しい工学科は産業のニーズに基づいて、学際的な融合が必要だ。イノベーションを起こし、様々な分野を横断する能力を持った人材を創ることが目標である。私たちの工程学院は、40年以上の教育の歴史があり、87年にはバイオ医学工程学科、2001年にバイオ医学工程学院が出来た。2009年には北京市の重点学科になり、2020年、国の一流専攻になった。博士コースも設けている。

 近年行っているのが、個別のイノベーション人材の育成である。能力アップをメインに知識と能力の融合を行う。またシステム化した集中訓練や個別指導を行う。10人一組のグループ式訓練も行う。指導教官の指導の下に研究、工学という2つの能力を身に付けている。イノベーションや起業に関する実践的な活動が行われ、研究の成果を新しい製品につなげていくシナリオを体感してもらう。バイオ医薬や医療設備などの開発への実践能力も養っていく。英語力も養っていく。
 企業との連携の中で学校の中の起業家を育成していくことができる。首都医科大学には多くの付属病院があり臨床のリソースがある。こうした強みを生かし、例えばマネジメントの実践や模擬入札会も行う。こういった中で臨床工学を学んでもらう。ただ2020年以降は新型コロナの影響を受けてオンラインとオフラインを組み合わせてやっている。
 40年ほど人材育成してきて、卒業生が北京や全国の病院、企業に就職している。このほか30%が海外に留学している。現在、海外の多くの教育機関と連携をし、単位互換制度などを行っている。今後、皆さんとも、より多くの国際協力が出来ることを祈念している。

【シンポジウムⅠ】 テーマ:アジア各国の臨床工学-(情報科学発展と医療安全への貢献、現状と課題、その他)

司 会:猶村 友隆先生 (倉敷芸術科学大学 准教授)

参加シンポジスト:
■吉田 靖先生(滋慶医療科学大学 教授/公益社団法人日本臨床工学技士会 常任理事
■張 懐嶺先生 (中国・広東医科大学 生物医学工程学院院長)
■Dr.K Siddique-e Rabbani (ダッカ大学 生物医学物理技術学部 名誉教授)
■ROSHAN BAJRACHARYA先生 (ネパール カンチ小児病院 チーフ・メインテナンス・オフィサー)

  • 猶村先生正面

    司会の倉敷芸術科学大学の猶村友隆先生

  • 吉田靖先生

    滋慶医療科学大学教授の吉田靖先生

日本の臨床工学に係る職能団体の理念と価値観~次世代医療に向けた技術への取り組み~
 まず、滋慶医療科学大学教授で日本臨床工学技士会の常任理事を務める吉田靖先生が「日本の臨床工学に係る職能団体の理念と価値観~次世代医療に向けた技術への取り組み~」のテーマで報告しました。

 2007年の医療法第5次改正での医療機器管理の義務化がターニングポイントとなり、臨床工学技士会では「専門臨床工学技士」と「認定臨床工学技士」の制度を確立した。しかし、資格を取得している会員は1000人に満たず、今後、キャリアアップ教育プログラムや専門技術教育プログラムをもとに、「認定臨床工学技士」の取得から段階を踏んで「専門臨床工学技士」を取得、さらにスペシャリストとマネジメントリーダーの素養をもった管理臨床工学技士の育成をめざす、生涯教育制度構築の体制化が重要だ。その際、ポイント制の導入によって、生涯教育ポイントを積算して「CEリーダー」や「CEレジェンド」として認定していく構想をもっている。大学院レベルの「周術期診療支援臨床工学技士(仮称)」育成案も考えているが、これらは喫緊の課題である、と述べました。
 
 司会の楢崎先生から「もっと会員を増やしていく方策はあるか」と質問があり、吉田先生は、「実際に臨床にいるのは2万人強。医療機器メーカーも含めて諸団体との連携の中で会員を増やす活動につなげていこうとしている」と答えました。

磁気共鳴画像ゲノミクスに基づく神経膠腫のサブタイプ予測と予後評価
 中国・広東医科大学生物医学工程学院院長の張懐嶺先生は悪性脳腫瘍として発病率の高い神経膠腫について「磁気共鳴画像ゲノミクスに基づく神経膠腫のサブタイプ予測と予後評価」を報告しました。

 進行が早く再発しやすくて治療が難しいといわれる神経膠腫のサブタイプをゲノム解析によって5つに分類、計500名の患者データを使って研究を行い、正確な分子サブタイプの予測と予後の評価を達成できることが分かった。さらに多数の医師による注釈を加えることによって、より意義ある研究にしていきたいと述べました。

  • 張懐嶺先生

    広東医科大学生物医学工程学院院長の張懐嶺先生

  • siddique-e先生

    ダッカ大学生物医学物理技術学部の名誉教授、Dr.K Siddique-e Rabbani

  • ROSHN先生

    ネパールカンチ小児病院のROSHAN BAJRACHARYA先生

バングラデシュの医用生体工学について
 ダッカ大学生物医学物理技術学部名誉教授のDr.K Siddique-e Rabbani先生は「バングラデシュの医用生体工学」について報告しました。

 バングラデッシュの病院では最新の医療機器を導入しているが、BME(生物医学技術者)やCE(臨床工学技士)が必要とされながら、一部の病院を除いて人材供給はなされていないことや、医療機器を保守する責任を負う国立のセンター「NEMEMW」があるが、ダッカをカバーしきれていない現実を報告。またバングラデシュ工科大学など複数の大学でBMEの学位を取得しても就職がない状況を訴えました。
 同先生は早くからITに注目し、英国のシェフィールド大学に留学後、国の許可を得て遠隔医療システム「ダッカ大学遠隔医療プログラム」の開発を行ったり、農村地域への遠隔医療システム導入を推進していると報告。ITへの高い情熱と専門知識を持つバングラデシュの若者を生かすためにも政府や日本などの支援が必要だと訴え、機器開発を行う国際的な技術センターの設立を提案しました。

ネパールの医療安全への情報技術の貢献の展望
 ネパールカンチ小児病院のチーフ・メインテナンス・オフィサーのROSHAN BAJRACHARYA先生は「ネパールの医療安全への情報技術の貢献の展望」について述べました。

 ネパールではコロナウイルスのパンデミックによって、情報技術システムが役立つことが明らかだが、必要なインフラが不足し、医療施設の向上にも支障をきたすことや、技術を持った医療従事者も不足、デジタル格差があると報告。固定ブロードバンドを利用できるのは25%で、電子カルテなどを使った高度な医療サービスは、主要都市の私立病院と公立病院でしか利用できないし、遠隔医療サービスはまだ一部の病院しか対応していないと報告。臨床機器のメンテナンスのための標準化されたプロトコルを持つことで、病院は予想を上回る患者数の増加に対しても準備を確実にすることができる、と述べました。

 最後に、楢村先生から「いろんな国々で、情報科学と医療安全に取り組むために様々な活動をされていることが良く分かった。コロナが終息して一日も早く対面で討論できる日を楽しみにしています」とまとめの話がありました。

【シンポジウムⅡ】 テーマ:「臨床工学技士の“情報科学発展と医療安全への貢献”のグローカル化への変化」

司 会:廣瀨 稔先生 (滋慶医療科学大学 教授)

参加シンポジスト:
■劉 楊先生 (上海健康医学院 医療器械学院 臨床工程技術専攻 講師)
■黒光 弘幸先生 (滋慶医療科学大学 准教授)
■黄 進先生 (四川大学華西臨床医学院/華西病院 副院長)  
■楊 玉真先生 ( 上海中医薬大学 鍼灸推拿学院中医工程学教室 講師)
■吉見 隆司先生 (大阪府臨床工学技士会副会長/医療法人徳洲会臨床工学部会事務局長/松原徳洲会病院技士長)

 

  • 廣瀨稔先生

    司会の滋慶医療科学大学教授、廣瀨稔先生

  • 劉楊先生

    上海健康医学院の劉楊先生

情報化医療機器の臨床安全管理技術人材の育成について
 上海健康医学院の劉楊先生は、中国・上海から「情報化医療機器の臨床安全管理技術人材の育成について」をテーマに、情報化医療機器における臨床安全管理技術人材の養成プロセスと方法について報告。一般開業医の標準研修を参考に、「衛生健康情報」や「医療機器データ情報」などのビッグデータを使い、「情報科学+臨床医学+工学技術」を持つ複合応用能力育成システムについて提案しました。

コロナウイルスのパンデミックによって、堅牢な情報技術システム
 また、滋慶医療科学大学の黒光弘幸先生は、「デジタルトランスフォーメーションを使用した安全で費用効果の高い医療機器管理―次世代を見据えた臨床工学技士への道標-」をテーマに発表しました。

 病院内における医療機器の安全な維持管理のために、臨床工学技士は病院経営に介入する新しい視点をもたなければいけないと主張。病院事業を圧迫している医療機器管理の合理的なコスト分析のために、デジタルトランスフォーメーションを組み込み、ビッグデータを詳細に分析することによって、医療機器管理が戦略的また計画的に行えるようになると訴えました。
 また最近、日本の株式会社ホギメディカルから開発販売された新しい医療機器管理システム「OPERA-Compass」によって、臨床工学技士の仕事が効率的になり、病院経営陣はコストの浪費を抑止できる、と紹介しました。

  • 黒光先生

    滋慶医療科学大学の黒光弘幸先生

  • 黄進先生

    中国四川大学の黄進先生

IoTに基づく病院装備管理
 中国四川大学の黄進先生は「IoTに基づく病院装備管理」について発表しました。

 大型病院における従来の伝統的な装備管理方式は現在、十分に対応できていない面があるが、医療設備のIoTプラットフォームを構築することにより、設備をリアルタイムに監視、対応処理することができ、臨床での効率的な機器使用が行える、同時に人工知能によって、設備の故障発生の予測も可能となると報告しました。

鍼灸器材応用の安全規範
 上海中医薬大学の楊玉真先生は、「鍼灸器材応用の安全規範」について発表しました。

 鍼灸器具は鍼灸の発展を促進してきたが、なかでもステンレス針は強靭性があり、錆びにくく長持ちする特徴がある。しかも安くて腐食に強く、曲がらない、鋭くて、なめらかなどの優れた性能があるので広く応用され、鍼灸医学の発展を促進した。また近代技術の進歩は、パルス電針治療器や灸治療器、レーザー照射治療器、磁気治療器、つぼ特種治療器、経絡ツボ測定器などの臨床での広い応用と良好な治療効果をもたらした。臨床応用における安全規範は極めて重要と考えると、提言しました。

  • 楊玉真先生

    上海中医薬大学の楊玉真先生

  • 徳洲会吉見先生

    大阪府臨床工学技士会副会長で徳洲会グループの吉見隆司先生

徳州会グループ臨床工学技士による医療安全への取り組み
 また大阪府臨床工学技士会副会長の吉見隆司先生は、医療法人徳州会臨床工学部会事務局長として、「徳州会グループ臨床工学技士による医療安全への取り組み」を発表。北海道から沖縄まで全国に71病院を展開する医療法人徳州会では、臨床工学技士が887名勤務し、施設の垣根を越えて横断的に活動できる臨床工学部会が組織されていると紹介。日常的なインシデント、アクシデント事例対策として、システム構築の検討を定期的に行い、実際に透析装置と電子カルテの連携システムを導入したり、医療機器管理ソフトの統一により機器点検の標準化とデータ管理を実施していると報告。双方向通信可能な医療機器の導入と電子カルテとのシステム連携の構築を検討しているとも述べました。
 
 吉見先生は、学校法人大阪滋慶学園の大阪ハイテクノロジー専門学校の卒業生で、30年近く前に恩師から「君たちは医学と工学の架け橋になるんだ」といわれた言葉を今も思い出すといいながら、ただこれからの臨床工学技士は「臨床工学と医療情報・情報科学の架け橋になって、各病院に落とし込んでいくことだと思っている。このように臨床工学技士が医療に積極的に関わることによって医療安全に大きく貢献できていると考えている」と報告しました。

 最後に廣瀨先生は、「工学的な医療技術がどんどん進歩している。その中で臨床工学技士がどうかかわっていくかが問われている。最後に吉見先生がおっしゃったように、IoTをどんどん取り入れていくなど現場の臨床工学技士の方が一番よく分かっておられると思う。現場と学問との橋渡しも含めて、各方面との橋渡しをどんどんやっていただきたい」とまとめました。

【パネルディスカッション】 テーマ「グローカル医療に求められる各国の臨床工学の実践」

司会 加納隆先生 滋慶医療科学大学大学院 特任教授

  • 加納先生

    司会の加納隆先生

 午後3時から最終セッションとして、滋慶医療科学大学大学院 特任教授の加納隆先生の司会でパネルディスカッション「グローカル医療に求められる各国の臨床工学の実践」が行われました。

参加パネリスト
◇貞廣 衝先生 ニプロ株式会社 国際商品開発本部長
◇劉 学軍先生 中日友好病院血液浄化センター 教授
◇Dr.Adis Tasanarong タイ・タンマサート大学チュラポーン国際医学部腎臓学科 教務部長/教授/医師/医学博士
◇李 宗傑先生 台湾・元培医事科技大学 生物医学工程学科 専任講師
◇YE HTAT NAUNG 先生 ミャンマー・ヤンゴン医用技術大学 メディカル・エンジニアリング・プロジェクト
◇関 謙太郎先生 バングラデシュ・グリーンホスピタルサプライ株式会社 海外事業部/臨床工学技士

海外における臨床工学への取り組み メーカーの立場から
 ニプロ株式会社の貞廣衝先生は、「海外における臨床工学への取り組み メーカーの立場から」を報告しました。

 2000年に100万人だった世界の透析患者は2020年に350万人となり、今後、新興国で増えて2030年には約700万人になるといわれている。海外では、臨床と非臨床の間に大きな壁があり、臨床工学技士の資格が存在しないため、ナースなど透析室スタッフが透析治療を安全に行えるための教育や訓練システムの構築が益々重要になっている。そのために各地域に透析治療を含め、様々な研修が行える環境を整備し、ニプロ独自の医療研修センターiMEPを設置、タイなど現在18カ国に25センターを展開している、今後は日本の医療技術を紹介する講演や研修会を開催していきたい、と報告しました。

  • 貞弘先生

    ニプロ株式会社の貞廣衝先生

  • 劉学軍先生 (2)

    中日友好病院の劉学軍先生

中国の血液浄化臨床工学技師の発展と国際協力
 中日友好病院の劉学軍先生は「中国の血液浄化臨床工学技師の発展と国際協力」について発表しました。

 中国での透析患者は昨年末時点で70万人おり、透析センターは6600か所、透析機器は17万台で、臨床工学技士は約3000人いる。国の規定で透析センターに1名以上のCEを配置しなければいけないため、さらに4000人のCEを養成しなければならない。中国では上海健康医学院以外、血液浄化に関するコースを設けているところはないので、学会がCEに関する研修、試験を行っている。また日本の臨床工学技士会と血液浄化に関する技術交流の確認書面を交わし、8年連続で交流している。透析技術は情報化・電子化が進んでいるので、学際的なチーム医療を行うなどアジア各国の皆さんと協力してCEの発展をよりスピーディにしていきたい、と述べました。

タイの“グローカル医療”に関する臨床工学技士の現状
 タイのタンマサート大学のAdis Tasanarong博士は、「タイの“グローカル医療”に関する臨床工学技士の現状」を報告しました。

 タイではクリニカルケアなどの患者数、病床数が増え、様々な医療機器装置の輸入量が増えており、医療機器のトレーニングの提供など患者のケアシステムを改善するためにCEの役割は高まっている、また日本の臨床工学技士の先生にCEのタイでの育成に貢献してもらっている。CEはICUや透析ユニット、内視鏡の仕事をしている。さらに機器の推奨とか購買、試験、メンテナンス、シュレッジポンプ、イリュージョンポンプ、呼吸器、患者モニター、保育器に対してサービスを提供しているが、タイ政府はCEのライセンス化の視点が欠けており、CEに対するトレーニングプログラムもない、このためヘルスケアの管理とか医療機器の管理がタイでは十分でないことが問題になっている、と述べました。またコロナによるパンデミックでは息つく暇もなかった。医療、工学テクノロジーのコンビネーションでCEのキャリアアップを構築し、CEの免許制度を導入するなど、病院におけるCEのポジションを高めることが必要だと考えている、と発表しました。

  • adis先生タイ

    タンマサート大学のAdis Tasanarong博士

  • 李宗傑先生 (2)

    元培医事科技大学の李宗傑先生

台湾の臨床工程発展現状説明
 台湾・元培医事科技大学の李宗傑先生は「台湾の臨床工程発展現状説明」を行い、台湾の医療の発展はかなり良い状況にあり、コロナの防疫対策も良好だった。台湾には429の透析センター、1万1000の透析設備があるが、透析機器の保守技師が不足している。台湾には23の大学があり、医療センター工学関連の部門があり、毎年1200人が卒業する。大規模なCTとかMRI、X線装置、透析装置などはまだ輸入に頼っている状況だ。
 
 臨床工学士の仕事だが、購入、管理、そしてメンテナンスだ。1987年に手術医学中央研究所を設立、先端的なバイオメディカルな研究をおこなっている。大学と医学専門学校との協力を促進している。もう一つの研究所は国家衛生研究院だ。1990年に設立され、老年医学、環境職業疾患、生命科学、薬理学、医療生体工学、生物統計学となっている。研究として、医療生体材料、組織工学、再生医療、医療生体画像、ナノ医療の技術応用、医療エレクトロニクス、高性能の医療機器などである。台湾ではもっと専門的な臨床生体工学技師が必要である。現在臨床生体工学技師の認定制度はない。ぜひ政府に構築してもらいたいと考えている。なので医療機器の操作はまだ医師やナースが行っている状況だ。医療機器の保守や購入については、もっと専門の生体工学技師が必要だと考える、と報告しました。

JICAミャンマー・プロジェクトの概要と臨床工学に関するミャンマーの医療分野の状況
 ミャンマーのヤンゴン医用技術大学のYE HTAT NAUNG先生は「JICAミャンマー・プロジェクトの概要と臨床工学に関するミャンマーの医療分野の状況」について報告しました。

 ミャンマーのメディカルエンジニアの立場はまだ確立しておらず、発展途上にある。1万人当たりの医師数は約5.4人、看護師は5.1人で日本と比べて非常に少ない。多くの海外からの医療機器はあるが、管理は益々、困難になっている。
 2016年から保健スポーツ省、日本の協力を得て2018年に医療機器を取り扱う人材育成のためのプロジェクトがスタートした。1年コースで先生の多くは日本から来てもらっているが、ミャンマー出身の先生もいる。JICAの支援も得ている。学生たちは病院研修にいき、効率よく装置を稼働させる方法や検査の方法、工具の使い方、データ収集の仕方などを学ぶ。このプロジェクトでは、すでに卒業した36人が臨床工学技士として病院で仕事をしている。これによってミャンマーの病院での問題が解決できてきている。彼らは医師やナースにも器具の使い方を教える役目を担っている。ヤンゴン総合病院はミャンマーで最も大きな病院で救急センターもあり、多くの医療機器が作動している。コロナ下で命を守るために酸素の管理など臨床工学技士の役割は非常に大きい。2月のクーデターやコロナ禍で大変だが、わずかな教員で卒業生の支援を続けている。臨床工学技士は病院コストを下げ、リスクを下げ、医療サービスシステムの効率を上げてくれると信じている。このプログラムを続けることによって、ヒューマンリソースの不足を乗り越えていけると信じている、と報告しました。

  • YE HYAT先生

    ヤンゴン医用技術大学のYE HTAT NAUNG先生

  • 関先生

    グリーンホスピタルサプライ株式会社の関謙太郎先生

ジャパンイーストウエスト医科大学病院におけるBMEの活動
 最後にバングラデシュで活動するグリーンホスピタルサプライ株式会社の関謙太郎先生が、「ジャパンイーストウエスト医科大学病院におけるBMEの活動」について報告しました。

 バングラデッシュは、まだ医療資源が十分とは言えない環境にある。グリーンホスピタルサプライ株式会社は2016年に現地の医療法人アイチグループと合弁会社を設立、JICAの支援を受け、2019年にジャパンイーストウエスト医科大学付属病院を建設し、一部開院している。MRI、CTスキャン、血管造影装置等の大型機器も導入、総合病院として運営している。BME部門は機器の納入から設置、運用に至るまで様々な業務を実施、8名のエンジニアが在籍し、設備管理も兼務している。これまで新規医療機器のインストレーションを行ってきた。
 2020年にはコロナ専用病棟を立ち上げ、これまでに1500名のコロナ患者の治療を行ってきた。重症患者への対応や酸素供給の切迫など、様々な困難に直面した。急激な患者の増加で、国内のほとんどの病院で中央酸素供給設備での酸素供給が不足する状況が発生したが、患者情報をモニタリングし使用量を算出するなどの対策を行うことで、安定した供給に努めた。
 BMEは院内の医療機器の管理はもちろんのこと院内設備の管理に至るまで、様々な場面で病院を支えることに貢献している。今後の課題としては、故障や修理、点検の実施に際して、国内に拠点をもつメーカーが少なく、国外対応が必要となる恐れがある。そのため、これまで納入してきた機器の保守管理体制を構築し、より安全な環境を整備していく必要性がある、と報告しました。

 各パネリストによる発表の後、意見交換が行われ、貞廣先生から各国では臨床と非臨床をつなぐ人材が切望されているが、法律の問題などで実現できていないのが実情だと補足がありました。またメーカーとしては、機器を正しく操作できる環境を作り上げていくことが第一優先だと考えている、と述べました。

司会の加納先生「研究開発の心を持った臨床工学技士に」と参加学生に期待

 加納先生から、コロナ下で日本では臨床工学技士が人工呼吸器やエクモの操作で活躍したが、各国でも医師以外に機器の操作で活躍した事例があれば紹介して欲しいと呼びかけがあり、ミャンマーのYE HTAT NAUNG先生は、「医療機器は10年ほどで寿命がくると更新しているが、MEが入ってメンテナンスをすればもっと長く使用でき、患者さんの命を助けることができる。コロナ下でも日本のプロジェクトで育った一期生のMEが医師や看護師に教えている」と事例を紹介しながら、日本からの支援の強化を訴えました。

 最後に、加納先生は「日本というローカルなところで生まれた臨床工学技士だが、今やアジアのスタンダードになりつつあると思っている。ポスター展示でもあるようにかなり高いレベルの研究開発に学生さんが取り組んでいることが分かった。臨床が一番だが、本日参加された学生の皆さんには、研究開発への心を持った臨床工学技士を目指して頂ければと思う」と取りまとめ、シンポジウムを終えました。

【研究発表ポスター展 表彰式】 最優秀ポスター賞に中国の首都医科大学チーム 千原学長が講評

学長ポスター展の講評を行う滋慶医療科学大学の千原國宏学長

 アジア臨床工学フォーラムの附属イベントとして、臨床工学を学ぶ学生の皆さんによる研究発表のポスター展示が、メイン会場横のラウンジで行われました。今回は日本から6件、中国から12件の計18件のエントリーがありました。
 その優秀ポスター賞の授賞式が行われ、実行副委員長を務める滋慶医療科学大学学長の千原國宏先生から賞状が手渡されました。千原先生がソサエティ5.0の超ハイパー社会やIoT時代を迎え、病院の機器もネットワークでつながっていることを意識した研究や開発が必須であり、AIやロボットなどを意識した研究が今回の表彰の対象になったと説明。「また医療安全が必須であり、日頃の作業からふっと気づくようなことをテーマにして研究したものも当然、入っています。21世紀の中枢を担う臨床工学技士として、日常の業務、そしてその中の気づきによって研究を深め、さらに自分のスキルを上げていく、知恵を磨いていく、そういった人材であり続けて頂きたい」と講評しました。
 そのうえで、最優秀賞を「ディープラーニングに基づく心外膜脂肪CT画像の分割と定量分析」を発表した中国・首都医科大学チームにオンラインを通して贈りました。また優秀賞は広東医科大学と中国科学院深圳先進技術研究院、済南大学の共同研究「ディープラーニングに基づく投影野の金属分割補助によるCT金属アーチファクト補正」に決定、同じくオンラインを通して、チーム代表の広東医科大学の朱昱霖さんに贈られました。

  • ポスター展2

    研究発表ポスター展

  • 最優秀ポスター

    最優秀賞を受賞した中国・首都医科大学チームの研究発表ポスター

日刊新聞社賞は中国・四川大学と出雲医療看護専門学校東京医薬専門学校の3校のチームに

 また日刊工業新聞社賞が竹本祐介・大阪支社長から四川大学華西臨床医学院 周靚さんの「甲状腺がんを診断するためのデジタルパソロジーAI開発についての研究」と、▽出雲医療看護専門学校臨床工学技士学科の津森駿佑さんらのチームによる「姿勢の違いが胸骨圧迫に及ぼす影響-バイオメカニクス的検証-」、▽東京医薬専門学校臨床工学技士科の白戸千咲さん、鈴木健太さんらのチームによる「聴器感受性変化に基づく周波数に着目した医療機器警告音の提案」の3校のチームにそれぞれ贈られました。

  • 表彰式

    日刊工業新聞社賞を竹本大阪支社長から贈られる東京医薬専門学校チーム代表の白戸さんと鈴木さん

  • ポスター

    浮舟総長に研究内容を説明する東京医薬専門学校の白戸さんと鈴木さん

実行副委員長の曽志嶸先生(広東医科大学副学長)が閉会のあいさつ

 閉会式には、実行副委員長で次回の「第6回アジア臨床フォーラム」の開催が予定されている広東医科大学の副学長、曽志嶸先生がオンラインで登場。「今回はハイブリッド形式で開催され、過去4回のフォーラムの盛り上がりを引き継いで、コロナが流行する中でも負けることなく開催し、価値ある大会となりました」と述べました。
 63年の歴史を持ち広東省最大の医療従事者の育成拠点として発展してきた次回開催予定地の広東医科大学について紹介したあと、「情報科学など科学分野は急速に発展し、様々な技術が臨床の場で使われるようになっています。このような中、医療の安全をどうように守るか、益々関心が高まっています。本フォーラムでは専門家がオンライン上で集まり、様々な発表がなされました。医療の安全、情報技術の発展に大きな貢献をすると思います。学生の皆さんにとってもいい学問の基礎となるでしょう。今回のポスター発表も素晴らしい内容でした。
 共にアジアのCEの新しい分野を開拓し、新しい進歩を遂げていきたいと思います。私たちの共同の責任であり使命だと思います。共に関心のある分野について協力を深め、未来のニーズにあった新しいモデルを作っていきたいと思います。そして未来に適した人材を育成していきたいと思います。人類の医療に対するニーズに貢献していきたいと思います。第6回アジア臨床工学フォーラムでは、ぜひこの美しい広東医科大学で皆さんとお会いしたいと思っています」と閉会を宣言しました。

〇主催(日本) /学校法人大阪滋慶学園、滋慶医療科学大学・大学院、アジア職業人材養成センター
〇共催(中国) /中国医師協会、中華医学会、広東医科大学、上海中医薬大学、上海健康医学院、深圳職業技術学院、広東薬科大学
〇後援     /文部科学省、大阪府、大阪府教育委員会、公益社団法人日本臨床工学技士会、一般社団法人日本臨床工学技士教育施設協議会、一般財団法人臨床工学国際推進財団、一般社団法人大阪府臨床工学技士会、一般社団法人大阪府医師会、公益社団法人日本看護協会、公益社団法人大阪府看護協会、中国医師協会、中華医学会、朝日新聞社、日刊工業新聞社、産経新聞社

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