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命のエンジニア 臨床工学技士をめざす 滋慶医療科学大学の入学式が行われました

滋慶医療科学大学入学式。浮舟邦彦総長が第2期入学生と別室におられる保護者に向かってあいさつを行いました

 医療現場や医療機器の開発現場で活躍できる命のエンジニアとしての臨床工学技士を育成する滋慶医療科学大学の2期生を迎える入学式が春爛漫の4月2日(土)、新大阪のホテル大阪ガーデンパレスで執り行われました。
 
 滋慶医療科学大学は2021年4月、医療技術の著しい進歩や医療現場等で求められる知識や技術も多様化している現状を鑑み、より社会のニーズに応えるために、2011年4月に医療の質と安全の分野における専門家、研究者を育成する日本で初の医療安全管理学の大学院修士課程として開学した「滋慶医療科学大学院大学」を「滋慶医療科学大学」と名称変更し、医療科学部 臨床工学科を設置するとともに、大学院で従来の医療安全管理学を継続しながらスタートしました。

 臨床工学技士はコロナ禍が拡大するなか、体外式膜型人工肺ECMOの操作などで注目を浴びてきましたが、開学2年目を迎えるにあたって教員陣もさらに充実、医療機器の速い進化に対応できる高度な臨床工学人材の育成に努めており、医療機関はもとより、医療機器メーカーなどからも大きな期待を集めています。

 入学式は、新型コロナウイルス感染症予防のため、出席者を医療科学部臨床工学科の入学生と学校関係者、そしてご来賓をお一人に絞らせていただいての開催となりました。

浮舟総長「リーダーシップをもった人材に育って欲しい」とあいさつ

学校法人大阪滋慶学園理事長でもある滋慶学園グループの浮舟邦彦総長

 式典では滋慶医療科学大学の理事長として滋慶学園グループの浮舟邦彦総長があいさつを行い、本大学が臨床工学技士の国家資格制度が出来る以前のメディカルエンジニア学科と呼ばれていた時代から長年にわたって臨床工学技士の育成にあたってきたレガシーの上に誕生した経緯を紹介しました。
 その上で浮舟総長は、「皆さんがめざす臨床工学技士は、人工心肺装置や血液浄化装置など生命維持装置を扱う専門家です。今では臨床工学技士の10人に1人という多くの皆さんの先輩たちが医療界で活躍してくれているのです」と将来携わる仕事の専門性と重大性に触れ、そのために「卓越した実践力に加えて、創造力、開発力、またマネジメント力などリーダーシップを持った人材として育っていただきたいのです」と述べました。
 さらに、「職業人教育を通して社会に貢献する」という滋慶学園グループのミッションや「実学教育」「人間教育」「国際教育」の建学の理念を説き、「明日からの学びを将来のキャリアの基礎・基本だと意識して研究や学びの課題を見つけ、没頭していって頂きたい」とエールを送りました。

千原学長「一心不乱に豊かな人間性と倫理性を備えた命のエンジニアをめざして欲しい」

訓辞する千原学長

 この日、式典の冒頭、千原國宏学長が訓辞を行いました。
 「パンデミックの状況下で命のエンジニアとして社会で活躍しようという強い意志をもって入学されたことに敬意を表します」と述べた後、先進医療や地域医療の現場ですでに医療のデジタル革命が確実に浸透していることを踏まえて、「本日第2期生として入学された皆さんは、協働力や思考力、判断力、表現力など本学で学ぶ上でふさわしい知識と技能を備えています。今後4年間、医療と工学のみならず、情報工学やデータサイエンスなど関連分野の知識と技術を真面目に学んでいってください。教員陣を信頼し、迷うことなく学びの道に勤しむとともにお互いに切磋琢磨することにより、充実した学生生活を楽しみ、医療機器の高度化、複雑化が進んだ現代のチーム医療を支える新しい時代の医療機器のスペシャリストである臨床工学技士をめざしてください」と述べました。
 「一心不乱」という4字熟語を紹介し、「いうまでもなく一つのことに心が集中していて他のものに心を奪われないことを意味します。由来は、仏道に精進して悟りを開き、多くの人を助けるために研鑽を高める覚悟や思いを込める仏教の言葉です。しかし現代では、目標や目的に向かって必死に頑張っている姿や何かに打ち込んでいる人に対して使われる言葉です。人間には元々、それほど能力差はありません。どういった気持ちや意思をもって物事に取り組んでいくのか、その差が結果的に大きく関係するのです。カントも説いているように、受動的に行動して偶然の成果を期待するのではなく、自分はどうしてもこれをやりたいのだという必然的要求をもってことに当たることが大切です。同時にこれまで支えて頂いた人々に対する感謝の念も忘れないようにすることも重要です」と、命の尊厳を理解した豊かな人間性と倫理性を備えた命のエンジニアに必要な知識や技術を確実に習得して欲しいと訴えました。

国立病院機構大阪医療センター院長、松村先生から「医療をめざす厳しさ」をご教示いただきました

④松村院長2国立病院機構大阪医療センターの松村先生

 実習先の病院関係者を代表して、大阪大学医学系研究科医学情報学教授としてメディカルエンジニアの領域で教育、研究をして来られた独立行政法人国立病院機構大阪医療センター院長の松村泰志様から、新入生にお言葉を頂きました。

 松村先生からは、専門職として医療現場で様々な医療機器を扱い、管理する役割を担う臨床工学技士は、「実はこの仕事は大変難しい仕事です」と前置きがありました。なぜ難しいかについて、様々な領域に亘り多くの側面をもつ医療の世界を把握することが求められる上に、医療装置や装置が対応する疾患についても、膨大な知識を習得しなければならないことや、医療機器のトラブルが原因で患者さんに被害が及ぶと、患者さんだけではなく医療提供者側としても大変なことになってしまう、まさにミスが許されない職場であること、そのために今はチーム医療体制になっていることなど、臨床工学技士としての心得や命を預かる医療者の厳しさや立場などについて、厳しくも分かり易くかつ詳細に話していただきました。
 最後に「これからしっかり学んでいただき、良い臨床工学技士となって病院に来ていただき、臨床現場で共に働く日が来ることを楽しみにしています」と入学を祝福して頂きました。
 
 背筋を伸ばして聴き入っていた入学生の皆さんは、医療現場の厳しさに触れて、ちょっぴり不安げな表情をみせる場面も。それでも所々で先生の言葉にうなづいては、改めて医療人をめざす明日からの学びに対する決意と覚悟を今一度確認しているようでした。

前途を祝す多くのお祝いのメッセージを頂きました

 日本医師会会長の中川俊男様や日本臨床工学技士会理事長の本間崇様をはじめ、大阪大学医学部附属病院臨床工学部や国立循環器病研究センター、国立病院機構大阪医療センターなど多くの医療機関や高等学校、海外提携校などから96通の祝電・お祝いメッセージを頂き、その一部が披露されました。

新入生を代表して井上さんが決意表明

新入生宣誓を行う井上さん

 入学生を代表して医療科学部臨床工学科の井上温斗さんが宣誓を行いました。
 高校時代は運動部に所属し人の命に近い場所で働きたいという思いを持っていたという井上さんは、コロナの治療で活躍しているのをニュースで知って臨床工学技士の存在を知り、本学を目指したそうです。
 コロナ下での生活を体験してきた井上さんですが、最近はロシアによる戦争の惨状を映像を通して目にし、「自分の置かれている環境がいかに平和で穏やかであることをしみじみと感じています」と述べました。
 そして、「今日から滋慶医療科学大学の学生としての第一歩を踏み出します。期待とともに少しの不安もありますが、恵まれた環境での学びや新たな出会いを大切にして大学生活を実りあるものにします。そして常に挑戦する姿勢を持ち続け、成長することをめざします」とまっすぐに前を向いて、新たな学びへの決意を力強く表明しました。

新入生の約3割は女性

 この日の入学生のうち女性は約3割。式典の終了後、お母さんと連れ立って壁に張り出された祝電に見入っていた上野望愛さんは、「姉が看護師なので医療の世界には興味がありました。私は高校時代からパソコンを使っていろいろとやるとか機械類が好きだし、臨床工学技士が面白いかなと思って」と、入学動機を話してくれました。まだまだ女性が少ない臨床工学の世界ですが、今後、理系女子がどんどん進出してくる可能性を示す入学式となりました。