お知らせ

News

男子110mハードルの高橋選手自己最高の日本選手権4位 新生・北海道ハイテクACの社会人アスリートが陸上最高峰の舞台で活躍しました

フルタイムで働く社会人アスリートとして日本選手権4位に入賞した北海道ハイテクACの高橋佑輔選手

 バンバンバン!すごいスピードで10台のハードルを跳び越えながら100m、110m先のゴールに突っ込む。まるで格闘技のようだ。

 大阪・ヤンマースタジアム長居で6月9日(木)から12日(日)まで開催された第106回 日本陸上競技選手権大会。日本最高峰の陸上競技の舞台で新しく生まれ変わった新生北海道ハイテクAC所属の社会人アスリート、男子110mハードルの高橋佑輔選手と女子100mハードルの村岡柊有選手がそれぞれ素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

 高橋佑輔選手は最終日の12日に行われた110m決勝に出場。戦前の下馬評をくつがえし、13秒57で見事、4位に入賞しました。前日に行われた予選で自己最高となる北海道新記録13秒49をマークし予選1組の2位、全体5位で準決勝へ、さらに準決勝でも自己記録を0.02縮め、全体2位13秒47でこの日の決勝に進んだ上での結果でした。

  • IMG_6880 予選

    予選1組に登場し北海道新記録の自己最高を出した高橋選手

  • IMG_7015 決勝進出へ

    初の日本選手権決勝を決めて喜ぶ高橋選手

世界選手権出場組に挟まれて「めちゃめちゃ緊張」 それでも13秒57の4位入賞

 陸上最高峰の日本選手権決勝の舞台は初体験です。天候は前日の雨から打って変わって夏の日差しがさす晴天。1.2mの向かい風のなか、高橋選手は泉谷駿介選手(住友電工)と村竹 ラシッド選手(順天堂大)のオレゴン2022世界選手権への出場を決めた2人に挟まれての第6レーンスタート。「めちゃめちゃ緊張した」という中、5番目のリアクションタイムで飛び出し1台目のハードルへ。ややタイミングが合いません。それでもなんとか踏ん張り、先行する泉谷選手らを懸命に追います。中盤の順位は5、6着といったところ。ここから持ち前の後半の強さを見せて、残りのハードルを次々とスムーズにクリア。13秒57の好タイムでゴールに飛び込んで4位に食い込み、入賞を果たしました。

  • IMG_7064 紹介

    スタートの紹介を受ける高橋選手

  • IMG_7119 追いかける

    中盤から懸命に追いかける高橋選手

練習は夜のチビッ子公園 練習場所にもひと苦労

 高橋選手は札幌市役所に勤務し、コロナ禍の最中は帰宅が深夜になることも。練習は、平日は週に2日程度、夜の誰もいなくなった自宅横のチビッ子公園で1時間余り行い、土日は車で30分の厚別公園競技場やハイテクACのインドアスタディアムまで出かけ、帰宅途中の駅前にあるジムで体力維持に努めてきました。

家族と専属トレーナー高田教授のサポート、セルフマネジメントで成績を伸ばす高橋選手

 学生時代はインカレ7位が最高。それが社会人になって自分でマネジメントするようになり、社会人1年目に日本選手権に初出場、成績も着実に上げてきて2020年8月、福井で自己最高の13秒60を出しました。それでも今大会出場者28人中、13位。昨年はアキレス腱を痛めてほとんど満足に走れませんでしたが、今年は最近高校の陸上部の監督を引き受けた妻の友紀子さんのアドバイスを聞いたり、ビデオを見ながら自分の頭で考えたりしながら、向上をめざしてきました。その成果か、戦前は決勝に進出できるかどうかも危ぶまれてきたのに、予選、準決勝と相次いで2年ぶりに自己最高記録を更新し、自身初の決勝進出を果たし、4位入賞につなげました。

 高橋選手が自己最高を2年ぶりに更新した11日、妻の友紀子さんに報告すると、なんと、友紀子さん自身もこの日地元で行われた競技会で、高校3年の時に100mハードルで出した14秒29の自己記録を何年かぶりで更新したと返ってきました。教えることで何かが変わったそうです。夫婦揃って同じ日の自己新記録に、「そんな偶然って、あるんですね」。高橋選手はびっくりしながら、自分のことよりも、ずっと嬉しそうでした。 

  • IMG_6945 高田先生

    決勝を前に高橋選手のケアを行う高田先生

  • IMG_7039 ケア

    コミュニケーションを取りながらケアする高田先生

 
 もう一人、高橋選手を支えたのが、理学療法士の資格を持ち、ハイテクACの専属トレーナーとしてチームを組む北海道文教大学教授の高田雄一先生の存在。様々なアスリートに先生特製のインソールを提供し、その運動効果を横浜国大と計測する取り組みを行う高田先生は、レースの前後に身体ケアを施したり、筋肉の使い方やインソール効果のアドバイスなどを行ってきました。

 決勝終了後、高橋選手はサブグラウンドで待っていた高田先生から「やったね」と声をかけられ、ハイタッチを交わしました。会場のあちらこちらでも、顔見知りの選手仲間らから “すごいよ”と、次々と健闘を称える言葉を浴びました。

 高橋選手は決勝を振り返りながら、「とても緊張しました。選手間には誰が勝つかわからない異様な緊張感に包まれていました。前半スムーズに入れていたら、もっと加速出来て、ついて行けたかも」と4位入賞を喜びながらも、表彰台にあと一歩だっただけに、悔しそうな表情を見せました。特に学生時代の1年先輩の3位に入った石川周平選手(富士通)には今回も直接対決で勝てなかったことがよほど悔しそうでした。

  • IMG_7143 表彰状

    4位入賞の表彰状を掲げて握手する高田先生と高橋選手

  • IMG_7100 ライバル

    ライバルの石川選手(右端)と3、4位争い

北海道ハイテクACの正垣代表 高橋選手に「良かった!良かった!努力は裏切らない」

 練習時間も十分になく専属コーチや練習環境にも恵まれない個人の社会人アスリートをサポートしようと新たな社会貢献活動を開始した北海道ハイテクACの正垣雅規代表は、「連日、遅くまで仕事をしながら向上をめざして努力する姿には頭が下がります。準決勝、決勝とテレビに食らいついていましたが、ハラハラドキドキでした。本当に良かった。努力は裏切らないということでしょうね」と、健闘を称えました。

女子100mハードル 村岡選手 来年の日本選手権への標準記録を突破

 村岡柊有選手は大会2日目、6月10日(金)に行われた女子100mハードル予選3組に出場しました。北海道ハイテクAC元メンバーで女子ハードルの日本のエース、寺田明日香さんの高校並びにアスリートクラブの後輩でもある村岡さんは、北海道教育大学を卒業後、北広島市にある児童通所支援circusで働きながら日本選手権への出場資格を獲得、大阪に乗り込みました。「職場の皆さんに練習時間を作ってもらっています。とてもありがたいと思っています」とレースに臨みました。

  • IMG_6740 村岡さん紹介

    日本選手権の舞台で紹介される村岡選手

  • IMG_6794 村岡さんハードル

    華麗なハードリングを見せる社会人1年生の村岡選手

 1本目のスタート。ファールが出て、審判員が村岡選手に近づいていきます。心臓に悪い音楽が流れます。日本選手権に出場が叶わなかった北海道ハイテクACのチームメイトの分も頑張りたいと言っていた村岡選手なのにと不安がよぎりますが、結局、隣のレーンの選手が失格となり、スタートはやり直し。気を取り直して注意深くスタートした村岡選手は、最初のスタートより遅れましたが、最後まで粘って濃いレースを展開。自身の今季最高の13秒51で5位に入りました。しかし、0.01秒差、順位一つ違いで準決勝への切符を逃しました。

 

IMG_6822 村岡さん最高峰の舞台での戦いを終えた村岡選手

 それでも来年の日本選手権の出場標準記録をクリアしており、村岡選手は「調子が上がってきていたので、楽しんで走ることができました。6月のシーズンに入ったばかりでの13秒5台。今シーズン中に昨年9月のインカレの自己ベスト13秒37をクリアできればと思っています」と、早くも9月に行われる全日本実業団陸上や来年の日本選手権に目標を切り替えていました。