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滋慶医療科学大学大学院の学位記授与式 11期生が医療の安全向上への貢献を誓いました

仕事をしながら医療安全管理学修士の学位を取得した修了生

 医療安全をマネジメントする能力を身に付け、キャリアアップをめざす滋慶医療科学大学大学院の「2022年度 学位授与式」が3月11日(土)、大阪市淀川区のホテル 大阪ガーデンパレスで行われました。医療安全管理学の修士を取得した修了生は、看護師、薬剤師、臨床工学技士などの職種の18人。それぞれの職場で、医療の安全向上に貢献していくことを誓いました。
 
 同大学院は学校法人 大阪滋慶学園が運営しており、2011年に国内で唯一「医療の質と安全」を探究する大学院、滋慶医療科学大学院大学として誕生。2年前、滋慶医療科学大学の発足に伴い同大学院に名称が変更になりました。今年の修了生は大学院大学からの11期生で、改編して最初の修了生となります。

「医療科学は医療の道理 学び続けてください」 千原國宏学長

 千原國宏学長は告示で、色付いたり花を咲かせたり、四季折々変化する樹木に対し、常に緑色を保っている常緑樹を引き合いに「不変」ということについて語りました。「夏の猛暑の中でも冬の吹雪の中でも、針葉を天に向けている松が私は好きです。時代や流行に流されない、確固とした自分を持った存在のように感じられるのです」と述べました。松は一見変わらないように見えて、実は常に葉が生え変わっていて、変化をすることで不変の姿を保っているといいます。

 「科学の世界では伝統を正しく継承していくことが重要な意味を持っていますが、変わらない正しい部分というのは、機織りでいう縦糸に例えることができます。それに『時代』という横糸を通し、『今』という布が編まれていくのです。私は松の姿を見るとき、縦糸と横糸の関係を見出すのです」と千原学長。

 そして「医療科学とは医療の道理である」として、尽きない好奇心と諦めない執念をもって誠実に実践すること、学び続けるよう求めました。「関連学会や本学主催の研究会などに今後も積極的に参加し、自己研鑽につとめ、同窓生どうし、互いに切磋琢磨して生涯の友を得てください。明快な問題設定、正確なデータ収集・整理・分析、新たな知識の可視化など、研究の中で醸成された課題探究力は、医療安全のチームリーダーとして合理的な課題設定や解決策を提示するうえで、必ず役に立つと考えます」と激励しました。

 この後、修了生一人ひとりに千原学長から医療安全管理学修士の学位記が授与されました。

  • 学び続けるよう語った千原学長

  • 修了生一人ひとりに学位記が授与されました

「医療安全のスペシャリストとしてのリーダーに」 浮舟邦彦理事長

 滋慶学園グループの浮舟総長は、同大学院を運営する学校法人 大阪滋慶学園理事長として祝辞を述べました。看護師や薬剤師、臨床工学技士など、修了生の多くがコロナウイルス感染症拡大の最前線である医療関連の職場で働いていることに触れ、「本来の仕事と家庭の両立のうえに、ご自分の勉強・研究を続けることは本当に大変だったと思います。それをこなして今日を迎えた皆さんに敬意を表したいと思います」と言ってねぎらいました。

 浮舟理事長は、日本が超高齢社会になるのに伴い医療のシステム・制度が変化し、多職種連携や地域包括ケアシステムの整備が進んでいることや、医療事故がなくならない現状、社会的には働き方改革が求められていることについて言及し、「リスクマネジメントがますます重要になってきている中で、皆さんに対する期待は非常に大きくなっています」と語りました。

 修了生たちに「大学院で学んだことをベースに、多くの学会や研究会、セミナーに参加して学びを継続し、知のネットワークを築いて頂きたいと思います」と求め、患者の目線に立ちジャンルを超えて医療安全管理学の研究・マネジメントができる、専門性を備えたスペシャリストとしてのリーダーになるよう期待されていると強調しました。最後に「学んできたことをしっかりと現場で活かして、患者さんにつくして頂くことを祈念します」とメッセージを贈りました。

  • 祝辞を述べる浮舟理事長 

  • 祝辞を頂いた大阪大学医学研究科の熊ノ郷先生

「医療のプロデュースで安全の担保を」 大阪大学医学研究科長 熊ノ郷先生

 来賓の大阪大学大学院医学系研究科長・医学部長の熊ノ郷淳先生は祝辞の中で、がんゲノム医療やがん免疫療法など飛躍的な勢いで進歩している医学の現状について説明されました。

 「これからは患者が自分の遺伝子情報を、例えばUSBチップの形で持ちながら、受診するような時代が訪れようとしています。どういう遺伝子に異常があったかが検査され、異常に応じた投薬治療ができるようになってきました。また免疫の力でがんを抑えるがん免疫療法の普及で、皆さんもこのこの治療を受けている患者と必然的に向き合う機会が増えてくると言われています」

 コロナ禍の中で新しいタイプのメッセンジャーRNAワクチンが開発され、その対応に追われたことや、ロボット手術の普及についても言及し、医療が次々と変わっていく中で、安全を確保することが重要な課題だと強調されました。

 「皆さんへの期待もますます大きくなってきます。医療の現場でリーダーとして指導的な役割を果たしながらも、是非学び続けてください。また学んだことを杓子定規にとらえないで下さい。たとえばコロナ禍のように、今まで自分たちがやってきた仕事とはまったく違うことも要求されます。それに対して柔軟に対応し安全を保っていくこと、医療をプロデュースしていくことが求められるのです」と話されました。

 大阪大学大学院医学研究科と滋慶医療科学大学とは繋がりが強いことにも触れ、「共に医療をプロデュースして医療の安全を担保していきましょう」と呼びかけられました。

「多くの課題をのりこえた経験は確かな自信」 修了生代表の謝辞

 この日の授与式には、大阪府医師会の会長や日本看護協会の会長、関西の主な病院長、社会福祉法人の理事長をはじめ、アメリカ、中国、台湾の大学などから多数の祝電が届いており、その一部が披露されました。

  • 謝辞を述べる日比さん

  • 医療関係団体や病院、海外の大学からの祝電

 最後に、薬剤師として働きながら医療安全管理学の学位を取得した日比麻有さんが、修了生を代表して謝辞を述べました。コロナ禍での大学院生活を振り返り、「本来の業務を優先せざるを得ないことが多く、体系的な学びと研究は容易なことではありませんでしたが、恵まれた学習環境の中、新たな知識を得る充実感、期待感に背中を押される毎日でした。そんな中、仲間と共に多様なアイデアを出し合い、多くの課題をのりこえた経験は、現場に戻り多職種の医療安全を推進していく私たちにとって確かな自信となりました」と語りました。

 研究論文について「先生方のご指導の下、自らの臨床理論にこだわり、真摯な態度で研究の糧を積み重ねることの重要性と、その成果を論文として表現する手法を学びました。論文が完成したときの達成感はこの先、私たちの心の糧となるに違いありません」と語り、「本学で得た多くの知識・経験を最大限に現場で活用し、医療・介護の安全向上に貢献していく所存です」と誓いました。