お知らせ

News

医療安全管理学の高度な道をめざす! 滋慶医療科学大学大学院の入学式が行われました

大学院の13期生の入学生たち

 高度化・多様化が進む現代医療の「質と安全」を探究する滋慶医療科学大学大学院の入学式が4月8日(土)、新大阪ワシントンホテルプラザ(大阪市淀川区)で行われました。

 医療安全管理学専攻のわが国で唯一の大学院として、学校法人大阪滋慶学園が2011年に設置。これまで215名の医療安全管理学修士を送り出しています。今年の入学生はコロナ禍の医療現場で奮闘してきた看護師、臨床工学技士、診療放射線技師ら。50歳代の人もいて、働きながら学究の道を目指します。

「知識力を磨き、探究力を深め、真の人間力習得を!」 千原國宏学長

千原國宏学長

 千原國宏学長は、この大学院が医療の質と安全を研究し、医療安全マネジメントのリーダーを育成することを目的に設立され、医学・看護学・心理学・人間工学・薬学など、多様な専門家による横断型の教育研究環境を構成していることを、改めて説明しました。

 医療科学の研究について、学長は観察結果から知識を蓄積する帰納的思考による自然科学や社会科学の方法と、推論で知識を創造していく演繹的思考の形式科学(形式を対象とする論理学、数学、ミクロ経済学など)の方法によって成り立っていると解説。そのうえで「横断型の医療安全管理学体系を構築するために、この大学院が果たすべき役割は益々高まっています」として、自ら設定した課題にもとづき研究を計画・実行していくよう期待を示しました。

 そして、「中国には『昼耕夜誦』という格言がありますが、まさに皆さんは、昼に働き夜は学問にいそしむという、文字通り困難な道に踏み出された。現代は様々なメディアを通して膨大な情報が流れています。いかに選択し活用するか、情報の収集力に加え選択力・活用力が大切です」と指摘。情報へのアクセスの便利さと引き換えに学習能力が衰えると危惧されている点にも言及し、大学図書館の活用を再認識し、いつでもどこでも学ぶという姿勢を忘れないよう求めました。

 最後に「知識力を磨き、探究力を深め、真の人間力を習得することを目標に研鑽してください。院生同士で切磋琢磨することで周りから思いを寄せられるリーダーに成長し、学位の取得まで精進されることを願います」と述べました。

「医療安全管理の研究者・リーダーになってほしい」 浮舟邦彦理事長

大阪滋慶学園の浮舟邦彦理事長

 滋慶学園グループ総長の大阪滋慶学園、浮舟邦彦理事長は大学院入学を歓迎し、「皆さんはコロナ禍のパンデミックの中、それぞれの現場で大変な思いで仕事をし、勉学に励んで来られたのではないかと思います」と語り、仕事や家庭を持ちながら大学院で研究に立ち向かう志をたたえました。

 浮舟理事長は、大学院を設置した目的や意義について述べ、「超高齢化社会を迎えて、まさに医療の質は変わってまいりました。医療は地域包括ケアの重要性がますます高まっています」と指摘。医療事故が皆無にはならないことや、働き方改革にいかに対応していくかという課題についても触れ、「医療に携わる人たちの働き方は、まさにリスクマネジメントの経営課題。こういう課題に対応していく人材、医療の質・安全を管理する人材の育成が求められているのです」などと述べました。

 そして様々な専門職種の大学院生が同じ目的で学問を究めることについて、「これからの学びの中で、ぜひ知のネットワークを作って頂きたいと思います。友人との人間関係、先生方との関係を大切にしてください。医療の質と安全を研究していくプラットホームの構築というのは、将来の大きな財産になっていくと思います」と語り、医療安全管理学の研究者、マネジメントのできるリーダーとなって、それぞれの職場で活躍するよう願いを込め、祝辞を締めくくりました。

「成功にはやり抜く力≪GRIT≫が大切です」 大阪警察病院 澤芳樹院長

大阪警察病院の澤芳樹院長

 来賓として、日本の心臓血管外科の第一人者である大阪警察病院の澤芳樹院長(大阪大学大学院医学系研究科名誉教授)が登壇し、自宅の庭のオオヤマザクラがこの日の朝に開花したことを話しました。

 「多くの桜が散り始めている時期に花を咲かせる遅咲きの桜です。良いものを見たと思いました。まさに皆さんはこれから大きく花を咲かせます。いろんな道を歩まれたがゆえの、新たなチャレンジに崇高なものを感じるのです。皆さんが大学院進学を決めたとき、まだコロナが終息するかどうかわからない時期だったはずです。その中で新しい道を歩もうとされることはすばらしい」

 このように述べた澤院長は、大阪に日本の医学の源流ともいえる適塾を開いた緒方洪庵の教え≪世のため、人のため、道のため≫という言葉を紹介しました。大阪大学時代から学生たちに伝えてきた言葉だそうです。「皆さんにぴったりです。やはり、世のため、人のため、道のため、これを高いレベルで思っているから、大学院に入られたのではないでしょうか。この道を究め、さらなる高みをめざし、努力されることに敬意を表します」と語りました。

 最後に「成功するために是非覚えておいていただきたい言葉があります」と、アメリカの女性の心理学者、アンジェラ・リー・ダックワースが提唱した≪GRIT≫を挙げました。「やり抜く力」「粘り強さ」を意味する言葉で、4つの英単語の頭文字をとっています。

・Guts(度胸・勇気)強い意志をもって困難に立ち向かう。
・Resilience(復元力)失敗しても諦めずに続ける。
・Initiative(自発性)自分で目標を見据える。
・Tenacity(執念)最後までやり遂げる

 澤院長は「洋の東西を問わず、成功には『やり抜く力』『粘り強さ』が大事だと教えています。今日の志を大切にして、世のため、人のため、道のため、歩んで頂きたいと心から祈念します」と激励のメッセージを送りました。

「医療安全管理学のスペシャリストになるべく共に学ぶ」 入学生代表

誓いの言葉を述べる新入学生の楞野さん

 入学生を代表して臨床工学技士の楞野哲寛(かどの・あきひろ)さんが「これからの医療・福祉は大きく変化し、様々な課題に直面するでしょう。そのような中、質の高い医療サービスの提供者として指導的役割を担い、専門的知識と論理的思考を高めて医療安全管理学のスペシャリストとなるべく私たちは集い、共に学ぶ友となりました。身が引き締まる思いです。先生方のご指導の下、医療の質と安全の向上に貢献すべく努力し続け、学業・研究に邁進することを誓います」と宣誓しました。

「他職種での授業が面白く、貴重な人脈を得た」 11期生が体験語る

 式典終了後、11期生として今年3月に大学院を修了したばかりの薬剤師、日比麻有さんが2年間の大学院生活についてレクチャーしました。京都の病院薬剤部に入職した日比さんは、2018年に病院の医療安全管理部へ異動になり、インンシデントの情報収集・分析や医療安全研修の企画・運営に携わりました。「医療安全を体系的に学びたい」「キャリアに強みがほしい」と思うようになり、2021年に同大学院に入学しました。

 大学院での研究について「多職種での授業がとにかく面白いです」として、「仲間たちとの授業やグループワークは発見の連続。職種や年齢は違いますが同級生なので気兼ねしなくてよく、専門的なことは互いに頼ればいいのです」と語りました。学友たちとLINEなどで意見交換したことに触れ「いろんな価値観が知れてよかったです。みんなで話すことが楽しい」と話しました。

 2年の秋には「医療の質・安全学会 学術集会」でポスター発表をし、論文作成にも役立ったこと、同期の看護師や臨床工学技士たちの発表が刺激になったことなどを具体的に説明。「医療安全にかかわる確かな知識を得たことが素直にうれしいと思いました。それまで想像もつかなかった研究をやり遂げたという達成感がありました」と振り返りました。大学院で学んだことで、多くの貴重な人脈を得ることができたそうです。

  • 多職種での授業がおもしろい!

  • 今春、学位を取得した日比麻有さん