お知らせ

News

『名中医に学ぶ 疼痛緩和の経筋治療』 東洋医療専門学校で特別講演会

 東洋医療専門学校(大阪市淀川区)で11月12日(日)、鍼灸師学科の特別講演会「名中医に学ぶ 疼痛(とうつう)緩和の経筋治療」が行われ、一般募集した鍼灸師や卒業生、在校生ら約60人が参加しました。講師は北京中医薬大学附属病院の趙吉平先生。「頸・肩・膝の痛みの共通点とその治療」と講演会のサブタイトルにあるように、各部位のさまざまな症状と効果的な治療法の解説と実演があり、参加者たちはメモを取りながら真剣に見聞きしていました。

 講演会の冒頭、東洋医療専門学校の事務局長で同校を運営する学校法人 大阪滋慶学園の古谷圭司理事が「本校は設立当初から、卒業生はもちろん業界の方々に開かれた学校を目指してきました。その一環として、著名な専門家を招いた特別講演会を続けています。今日の趙吉平先生は7年前にも講演に来て頂いています。先生方が今日のお話を参考にして、一人でも多くの患者さんの痛みを和らげていただけたら、幸いに思います」と挨拶しました。

中国の名医、頸椎症・肩関節周囲炎・膝関節症の効果的な治療法を伝授

 趙先生はイントロダクションとして、経筋治療に関する基本的なことと講演の流れについて話しました。今回、取り上げる頸椎症や肩関節周囲炎、膝関節症は一般的によくある疾患で、痛くてズキズキと疼(うず)きます。いずれも筋腱(きんけん)と骨に深く関係しており、経筋(靭帯・筋肉・関節を含む筋肉組織とそれらのネットワーク)の病気に分類されると説明しました。肩こりや寝違いなども経筋病に含まれます。

 さらに、臨床効果を高めるためには、どういう治療のツボを使い、どんな技法で行うかがポイントであると指摘。局所の取穴(ツボの場所を見つけること)以外に弁証(病の状態を把握する)取穴、現代医学に基づく取穴などもあることを解説しました。鍼の技法の中でも「報刺」・「雀啄刺」・「透刺」は一番よく使われていますが、趙先生たちは古典を継承したうえで、オリジナルの治療法も開発し、臨床効果を大きく引き上げたそうです。

※「雀啄刺」:雀が餌を啄(ついば)むように鍼を頻繁に刺抜する方法。
※「報刺法」:痛むところが動いて定まらない時、痛むところを手で追いかけて繰り返し刺す方法。刺した鍼はそのまま抜かない。
※「透刺法」:一本の鍼で複数の穴(ツボ)を刺す方法。普通の方法より経路の通りを良くし、血流改善や筋肉の柔軟性を促す。

 続いて今回の講演のテーマである(1)経筋病の概論、(2)頸椎症の「雀啄刺」、(3)肩関節周囲炎(五十肩)の「報刺法」、(4)膝関節症の「透刺法」の各テーマについて、今回のために特別に用意されたテキストに従い詳しく解説をしていきました。

 鍼治療の実演では、会場の参加者の中から首筋の鈍痛や五十肩の症状などを持つ人に協力してもらい、趙先生の穿刺(せんし;鍼を打つこと)を受けてもらいました。趙先生は触診でツボを探しながら、一人ひとりの症状を解説。その人に合った治療を施していました。

「多くの学び・発見があり、経洛治療に活かしたい」 参加した鍼灸師

 参加した鍼灸師学科(夜間部)の3年生、吉村梨紗さんは、講演会で学んだことを中心に感想を語ってくれました。「今回初めて『経筋』という考え方を踏まえて頸椎症・肩関節症・膝関節症の疼痛緩和治療を学びました。印象的だったのは、一つの経穴(ツボ)から別の経穴に向けて刺す『透刺法』です。膝関節症に対して、膝近くの外側の経穴から対応する内側の経穴に向け長い鍼を通すことによって、本来2本鍼を刺すところを1本ですませることができ、さらに先生の研究データから、より高い治療効果を出せるということを教えていただきました。この技術を用いれば効率的に治療効果が出せるので、臨床に出た際にとても役立つ技術だなと感じました」とコメント。

 さらに「肩関節症では報刺法を用いて治療しており、動かして最も痛いところに病位を探りながら刺していくという技術を教えていただきました。この方法はかなり即効性があり、正確に刺していけば痛みがなくなっていく様子が見てわかったので、とても面白かったです。普段の授業の中ではなかなか教えてもらえない実践的な技術を伝授していただき、とても勉強になる講演会でした」と絶賛していました。

 また大阪府吹田市の整骨院で鍼灸師として働いている一般の男性(34)は「職場に中国医学の名医の特別講演会の案内チラシが届き、初めて参加することにしました。コロナ禍で、オンラインでしか鍼灸の研修や勉強会ができない状態でしたが、このように中国の名医による座学プラス、リアルの実技があるということでとても楽しみにしていました。鍼を打つツボを探す実際の治療の場面を見ることができて、とても参考になりました。いろいろな学び、発見があり、今後の経絡治療に活かしたいと思います」と話していました。

(Web広報センター)