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医療の質と安全の向上に貢献を! 2024年滋慶医療科学大学大学院 入学式

 「医療の質・安全の向上」に貢献する人材を育成する滋慶医療科学大学大学院の入学式が春爛漫の4月6日(土)、大阪市淀川区の同大学で執り行われました。

 同大学院は日本で最初の医療安全管理学修士課程のある滋慶医療科学大学院大学(現・滋慶医療科学大学大学院)として、2011年に学校法人大阪滋慶学園が設置。これまで237名の修士を送り出しています。第14期生となる今年の入学生は、看護師、臨床工学技士、言語聴覚士、スポーツトレーナーの資格を持つスペシャリストで、コロナ禍の現場で奮闘してきました。多くの入学生は仕事と家庭を両立させながら研究の道を目指します。

 式典は国歌静聴でスタート。今年の入学生13人の発表の後、千原國宏学長が訓辞を述べました。

「『一念通天』を座右の銘として努力を」 千原國宏学長

 大阪滋慶学園では、この夏に開業予定の大阪中之島の未来医療国際拠点「中之島クロス」に研究拠点を設置。今後、ヘルステックの研究開発など幅広い分野に貢献しうる人材を育成しようという構想をすすめています。

 千原学長は中之島クロスにも触れながら、医療業界の課題にも言及。働き方改革などにより、人手不足という厳しい状況を生んでいると指摘し、「リカレント教育の先駆けとして開設された医療管理学研究科で、医療の質と安全を探究し、医療安全マネジメントのリーダーとして活躍しようと入学された皆さんに敬意を表します。新しいタイプの横断型の学問ですが、安全管理学体系を構築するため大学院が果たすべき役割は益々高まっています」と語りました。

 医療の質と安全を探究する学問について、学長は観察結果から知識を蓄積する帰納的構造をベースとする自然科学や社会科学の実践的方法と、推論により知識を創造する演繹的構造をベースとした数学や統計学などの形式科学によって成り立っていると解説。「患者の安心と医療の安全に直結する医療セーフティマネジメント学や、医療リスクマネジメント学なども学び、医療及びヘルスケア領域の質の向上に貢献する能力を涵養してください」と求めました。

 さらに学長は禅語の『結果自然成(けっかじねんになる)』を紹介し、結果というものは自然に出て来るものであって、人間の作為や思惑、計らいを離れているという意味だと説明。「言い換えれば、真摯に誠実に努力すれば結果はついてくるという禅語なのです」と説きました。

 発明王エジソンの『絶え間なく粘り強く努力する。これこそが何より重要な資質であり、成功の要といえる』という名言や、ナイチンゲールの『諦めなどという言葉は私の辞書にはない。諦めない限り可能性はある』という言葉を引用しながら、「夢を叶えることは簡単なことではありませんが、『一念通天』(ひたすら信じて念じ続ければ、必ず天に通じて成し遂げられるという意味)を座右の銘として努力されるよう願っております」と激励しました。

「医療安全はマネジメント、或いは経営の問題」 浮舟邦彦総長祝辞

 大学の運営母体である学校法人 大阪滋慶学園の理事長で、滋慶学園グループの浮舟邦彦総長は祝辞で、「仕事や家庭を持ちながら、医療の世界に貢献しようと研究生活に入る、その志に敬意を表します。13年間にわたり教授陣や歴代の院生たちが築き上げた研究実績や高い評価に負けないよう続いて頂けたらと思います」と語りました。

 浮舟総長はさらに、医療業界はAIやIOT、DXなどの技術進歩に伴い、大きな改革が進む一方で、コロナの後遺症や医療事故調査制度、働き方改革、地域包括ケアシステムの構築など多くの課題も抱えていることを指摘し、「医療安全はマネジメント、或いは経営の問題でもあるわけです」と強調しました。

 また大学院の特色について、経験豊富な多職種の学友や医療機関と連携して学べることだと説明したうえで、「これからの2年間は決して生易しいものではないと思いますが、主体的にリーダーシップやフェローシップを発揮し、学会などに積極的に参加して、学びを深めていただきたい。また素晴らしい仲間、先生方、業界の方々とのネットワークをつくり、人間力を発揮していただきたいと思います。目的目標をしっかりと持って研鑽に励み、たくましく成長されんことを祈念いたします」と締めくくりました。

「『縦糸の医学』と『横糸の医学』でキャリアの発展を」 熊ノ郷淳先生

 来賓として式典に出席した大阪大学医学部長の熊ノ郷淳先生は最初に「皆さんは、医療安全において主導的な役割を発揮することが求められています。この4、5年、医療現場は大きくかわりました。一番いい時期に学ぶ場にこられたと思います」と述べました。

 さらに、内科医療がこれまで飲み薬がメインだったのが、今は医薬品の売り上げの6、7割をバイオ製剤が占めていると指摘。例えばCAR-T細胞療法(患者の血液から作ったCAR-T細胞と呼ばれる細胞を用いたがんの治療方法)がリンパ腫の治療に導入され、普通の医療として定着し、コロナ禍においてはメッセンジャーRNAを用いたワクチンが登場していることなどを説明しました。AIによる診断も導入されているといいます。

 「今どんどん進歩していく医療環境の中で、どうやって医療の質と安全を担保するかということが求められているのです。『縦糸の医学』(専門性を追求する研究)と『横糸の医学』(学際的な研究)という言葉がありますが、皆さんの専門性に加えて『横糸の医学』によって、全体を俯瞰しながら医療安全に目利きをすることが、皆さんに求められているのです」

 熊ノ郷先生は、オーケストラの指揮者に例え、それぞれの楽器がどんな音がするのかを知らなければ、指揮はできないし、またどんな音が出しづらいのか、どこで一番ミスが起こりやすいかを知らなければいけないといい、「皆さんも医療現場の指揮者、リーダーとして力を発揮するために同様に知ることが必要です。『縦糸の医学』『横糸の医学』を組み合わせて、キャリアをさらに発展させていただけたらと思います」と語りました。

「仕事・家庭・学業を両立させ精進します」 入学生の宣誓

 式典の最後は、新入学生の宣誓です。代表の新名亜弥さんが「私たちは、さまざまな地域や分野から集まった仲間たちと学べることに感謝し、多様な分野の専門家である先生方の下、俯瞰的かつ論理的な視野をはぐくみ、真摯に研究に取り組んでいきます。今後、医療は地域包括医療システムのさらなる推進、またDXの推進などにより、大きく変化していきます。コロナ禍での経験と大学院での学びを活かし、医療の質と安全の向上に貢献できる人材となるべく、仕事・家庭・学業を両立させ、精進していくことを誓います」と述べました。

 この後、2019年4月から2年間、大学院で研究した看護師の修了生がプレゼンテーション。仕事をしながら勉強時間を確保するために行った工夫や、終了後には、論理的思考・説明力・文章力が向上したこと、看護師長から副部長に昇進したこと、認定看護管理者の資格を取得してキャリアがアップしたことなど、どのように自らが変化したかを語り、入学生たちは真剣な眼差しで聞いていました。

(Webセンター)