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活躍のフィールド広がる臨床工学技士めざす! 滋慶医療科学大学 入学式

 医療の質や安全の向上に貢献できる“命のエンジニア”、臨床工学技士の人材を育成する滋慶医療科学大学の4期生を迎える入学式が、関西各地で桜が満開となった4月6日(土)、大阪市淀川区の同大学で執り行われました。

 滋慶医療科学大学は、医療の質と安全の分野における専門家、研究者を育成する日本初の医療安全管理学の大学院修士課程として、2011年に開学した滋慶医療科学大学院大学が源流。2021年に滋慶医療科学大学と名称変更し、医療科学部 臨床工学科を設置するとともに、大学院で従来の医療安全管理学を継続しながらスタートしました。開学から3年。4期生が入学し、1~4学年が揃いました。

 

 臨床工学技士は、医療機器のスペシャリスト、最先端の装置を操るエンジニア、或いは不安を抱える患者に寄り添うケアラーとして、更には新しい機器を開発するパイオニアとして、数限りない役割が求められ、その活躍のフィールドはますます広がっています。開学4年目にあたり教員陣もさらに充実、医療機器の進化に対応できる高度な人材育成に努めており、医療機器メーカーからも期待を集めています。

「何度も繰り返す“読書百遍”の学びを」 千原國宏学長

 4期生として入学したのは編入学生を含め計37名。入学式では一人一人の名前が読み上げられた後、千原國宏学長が訓辞を行いました。

 千原学長は大阪滋慶学園が今年、未来医療国際拠点「中之島クロス」に研究拠点を設置したことを紹介し、「本学は常に未来を見つめた医療科学大学です。皆さんは世界を意識した広い視野を持った人間として成長し、本学の評価を高めていただきたいと思います」と述べました。

 大学では講義の中から自ら課題を発見し、その答えを追究する自主的な学びが中心になることを説明し、「新しい価値をつくるための仮説の立て方や、そこに至るまでの情報収集、分析方法を体系的に学び、講義の内容を自分で深掘りしていく必要があります。講義中につかんだ好奇心の入り口を糸口に自主的に調べる習慣をつけてください」と求めました。

 また学問には「繰り返し」が重要であることを、女優の岩下志麻さんの話を例に説明しました。岩下さんはインタビューでセリフを忘れないための秘訣を聞かれ、「私は台本を百回、声に出して読んでいます」と答えたそうです。「まさに“読書百遍”(難解な文章でも繰り返し読めば意味が自然に分かる)。自由と責任を自覚して考えることを忘れず、学びの道に一心不乱で取り組んでください」と千原学長はつなぎました。

 最後に、大阪が江戸時代の医師で蘭学者の緒方洪庵が適塾を開き、福沢諭吉ら多くの人材を輩出した学問の都であることや、入学式の4月6日が、1909年にアメリカの軍人、ロバート・ピアリーが6度目の挑戦で人類初の北極点到達を果たした日であることを引き、「スタートラインに並んだ新入生・編入生の皆さん、充実した学生生活をエンジョイするとともに、整備された図書館の蔵書を十分に活用して、“読書百遍”の学びにチャレンジして、精進してください」と激励しました。

「臨床工学技士の存在感はますます高い」 浮舟邦彦総長

 大学の運営母体である学校法人 大阪滋慶学園の理事長で滋慶学園グループの浮舟邦彦総長は祝辞で、コロナ禍を経て医療へのニーズが拡大する中、診療技術の進化や医療機器の高度化が進む一方、DXなどの技術進歩や働き方改革に伴い、医療を取り巻く環境が大きく変わっていることを指摘し、「チーム医療、地域包括ケアが進む中で、臨床工学技士の存在感はますます医療現場で高いものになり、責任も大きくなってきています」と述べました。

 さらに滋慶医療科学大学が、「実学教育」「人間教育」「国際教育」の理念の下、医療のスペシャリストを多数輩出してきた実績があることを強調し、3つの理念それぞれについて説明しました。実学教育については、「皆さんは医学と工学の知識・技術はもとより、病院、企業での実習、さらにはAIやVR、データサイエンスなど幅広い領域を修めなければなりません」。

 人間教育については「建学以来のモットーである『今日も笑顔であいさつを』はコミュニケーションの原点。よい習慣を身に付け、チームで働く力、問題解決力、マネージメント力を自律的に学ぶことが大事です」と説きました。国際教育については「これからの臨床工学技士は世界が職場になります。専門英語を身に付け、多くの学会に参加することも必要です。本学が主催しているアジア臨床工学フォーラムに積極的に参加されることを期待しています」と述べました。

 そして、国家試験合格という目標を達成するためは「各分野の教員の方から貪欲に知識、スキルを吸収していってもらいたいと思います」とエールを送りました。

「データ駆動型医療では活躍の場は無限」京大病院 黒田知宏教授

 来賓の京都大学医学部附属病院 医療情報企画部の黒田知宏教授は、臨床医学が情報革命により大きく変化をしてきたと指摘し、画像診断を例にあげ「自動診断装置である医療AIを導入することが、良い医療の一つの条件になっています」と説明しました。チャットGPTなど生成AIの技術もカルテ作成などで医療現場に入りつつあり、世界ではAIをつくるためのデータ蓄積競争が繰り広げられ、データ駆動型医療(データを元に医療行為を決定すること)の実現に向け動いているといいます。

 黒田教授はデータ駆動型医療ができあがったとき、医療現場がどう変わるのかということについて「AIなどの機械と人間が協力して患者さんへの臨床を行う医療になるだろうと考えています」と語り、航空機の自動操縦装置を例に説明しました。

 「航空機は離陸から着陸まで自動操縦が基本ですが、操縦席には常に2人のパイロットが座って、機械が正しく動いているかをモニターしながら、次の動作を機械に指示したりしています。もし機械が間違ったことをしたら、人間のパイロットがとってかわります。2機の航空機が衝突しないよう、機械同士が譲り合っていますが、地上の管制官がそれを見守っています」

 つまり、航空機では「人と機械とが高度にコミュニケーションをとる」ことで安全性が保たれており、医療現場もそうなるだろうと黒田教授は予測。その上で、データ駆動型医療が実現したときに最も重要なのが、臨床工学技士の存在だと強調しました。「航空機の事故は、機械が小さなトラブルを起こす、もしくはパイロットが小さなデータを見誤ったときです。機械と人間が一緒に仕事をするときは、お互いが相手のことを理解し、相手に合わせて行動することが必要になってきます」と黒田教授。

 データ駆動型医療では、臨床工学技士は“命のエンジニア”であるだけではなく、機械を作り出す医療機器産業、さらに新しい技術を生む学術研究まで活躍の場は無限に広がっているとして、入学生に対し「この学び舎で得られる知識だけでなく、ニュースや講演会などで、新しい情報を得られるよう常に高くアンテナを掲げてください」と語りかけました。

「人と人とのつながりを大切に常に挑戦を」 入学生が決意表明

 入学生を代表して宣誓をした塚原郁依さんは、最初に今年の元日に起きた能登半島地震の被災地で、多くの人が苦しい生活を余儀なくされている中、復興に向けて手を取り合う姿を見て、「人と人との関りやつながりは重要だと感じた」と語りました。

 そして「今日から滋慶医療科学大学の学生としての第一歩を踏み出します。学ぶことへの喜びや新たな出会い、その中で築かれる人と人とのつながりを大切にして、大学生活を実りあるものにします。多くの講義や実習を通して、医療現場で求められる幅広い知識や技術を身につけていくことはもちろん、常に挑戦する姿勢を持ち続け、人として成長することをめざします」と、新たな学びへの決意を表明しました。

 この後4年生の吉田未来さんが登壇し、課題解決のための研究について紹介しました。病院実習で人工透析中に針が抜けてしまう抜去事故を知り、「人工知能で事故を回避できないか」と研究を続け、卒業論文にまとめていくことをプレゼンテーション。入学生らは目を輝かせて聞いていました。

「どんな些細なことでも、気軽に相談を」 保護者会で千原学長

 式典後に保護者会が開かれ千原学長、浮舟総長、廣瀬稔学科長らが出席。別室でモニター越しに式典を見守っていた保護者らに、大学生活について説明しました。

 千原学長は「本学は(新大阪)駅から近く、雨が降ってもわずか5メートルの道を渡るだけで濡れることはなく、傘を忘れても風邪をひくことはありません」と言って笑わせた後、「ご子息・ご息女の皆さんが国家試験を無事通過できるよう、大学を挙げて全力を尽くします。また相談窓口を設けておりますので、どんな些細なことでも、気になることがあればいつでも気軽にご相談ください」と、保護者を安心させるように話しかけていました。

(Web広報センター)