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医療安全は経営の問題でもある! 滋慶医療科学大学大学院の入学式が行われました
「医療の質と安全」の向上を探究し、リーダーとして活躍できる人材の育成をめざす滋慶医療科学大学大学院の入学式が4月5日(土)、大阪市淀川区のホテルで開催されました。「医療安全は経営の問題」「安全管理学は組織と文化を調整する学問」…。法人理事長や来賓から貴重なメッセージをいただき、医療の仕事を続けながら研究生活に入る入学生たちは、目を輝かせて聞いていました。
同大学院は学校法人大阪滋慶学園が運営しています。2011年に日本で最初の医療安全管理学修士課程のある滋慶医療科学大学院大学としてスタート。2021年に滋慶医療科学大学大学院と名称変更になり、これまで計249名の修士を送り出してきました。第15期生となる今年の入学生は看護師、放射線技師、臨床工学技士、社会福祉士、作業療法士、理学療法士などの職種のスペシャリスト。仕事と家庭、大学院生の“三足のわらじ”を履いて取り組む入学生もいます。

「すぐれた研究は自ら実感した問題から生まれる」 千原國宏学長
最初に入学生13人の発表の後、千原國宏学長が訓辞を述べました。研究が大学院の役割に移行しつつあると指摘し、「単なる知識の獲得ではなく新たな知見を創出するという使命を発揮するためには、発見・発明や法則・理論などの開発がなければなりません。そして研究成果を、論理性をもって展開するのが研究論文で、一貫した合理性や論理性、実証性が求められます」と語りました。
同大学院で探究する医療科学について学長は、観察結果から知識を蓄積する帰納的構造を基本とする自然科学や社会科学の実践的手法と、合理的な知識を創造する演繹的構造を基本とした数学やデータサイエンスなどの理論的手法の双方で体系化された学問だと解説。「この大学院は、多彩な分野の専門家が一堂に会した横断型科学を展開することにより、現場で学び設定した課題に基づいて研究できるよう指導をしています」と述べました。
すぐれた研究は自ら実感した問題からしか生まれないとも指摘し、「常に何故かを問いかけ、自分の体験で浮かび上がってきた課題を解決する研究を通し、デカルトが『方法序説』で提唱した観察・分析・統合・検証の4つのプロセスを実行する科学的方法を学んでいただきたい」と求めました。さらに福澤諭吉の『学問のすすめ』にある「賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによって、出で来るものなり」という名言を紹介し、常に学び続けることの大切さを説きました。


千原学長は結びに「院生どうし切磋琢磨して生涯の友を得て下さい。『先進の知識力を磨き、飽くなき探究力を深め、真の人間力を修得する』ことを目標にして懸命に研鑽し、初心を忘れず『一意専心』の気持ちで、円満成就の知識をもったリーダーに成長することを祈念します」と締めくくりました。
「生涯活かせる人的・知的ネットワークを」 浮舟邦彦理事長
滋慶学園グループの総長で、運営母体の学校法人大阪滋慶学園の浮舟邦彦理事長はビデオで祝辞を贈りました。
皆様は、コロナパンデミックを大変な思いで乗り越えて、勉学や仕事に励んで来られました。多くの方は、仕事や家庭を営みながら医療の安全・安心のために貢献しようと、本大学院での研究生活に入られます。素晴らしい教授陣や先輩院生の方々が築いて来られた研究成果や各方面からの高い評価に負けないよう、勉学や研究に励んでいただきたいと思います。
医療界は少子高齢化とAIやIoT、DXなどの技術の急速な進歩で、大きく変わろうとしています。その一方で、新たな感染症の脅威や医療事故調査制度、働き方改革、地域包括ケア、診療・介護報酬、サイバーセキュリティ等々、多くの課題を抱えています。世界的な取り組みも広がってきた医療安全は、マネジメント、経営の問題でもあります。
本学の特色は、優れた教授陣のもと、経験豊かな多職種の学友や多くの医療機関、医療メーカーなどと連携して学べることです。今からの2年間は主体的にリーダーシップやフェローシップを発揮し、研究・研修や学会などを通して生涯活かせる人的・知的ネットワークを築き上げて下さい。目的・目標を持って研鑽に励み、たくましく成長されることを祈念します。


「医療安全は文化である」 大阪ろうさい病院 樂木宏実総長
続いて来賓の独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪ろうさい病院の樂木宏実総長から祝辞をいただきました。
「医療安全は文化であるというのが私の信念です」―。樂木総長は冒頭でこう語り、「安全を見据えて組織と文化を調整する学問が医療安全管理学です。文化として医療安全が根付かないと組織は良くなりません。安全学は世界で色んな学問があり、組織をつくり、組織を守り、それが社会に貢献できる組織になるために、安全学は大きな意味を発揮します」と持論を展開しました。
一例として、事故が発生した場合の対応として、誰が悪いということではなく、まずは組織の中で何が出来ていなかったのか、どういう不利益をもたらしたのか、ということを解き明かすことが大切だと強調。そのうえで如何にして安全を確保し、医療の質を担保するかという問題に向き合うべきだと語りました。
樂木総長は、「医療の安全を育む中で、文化をつくるんだという想い、その中核になるんだという気持ちがあれば、必ず解決の糸口が見つかると思います。アクシデントが起きたとしても、それを乗り越えてより良い組織をつくりあげていくことこそが、リーダーになる皆さんの目指すべき道だと思います」と訴えかけました。
また、多岐にわたる医療職のプロフェッショナルが集まる同大学院について、学問だけではなく、他の職種が何をしているか、学問的にどういう立ち位置なのかが学べる体制を高く評価。病院内で専門外の人たちと付き合おうとしても垣根があるのが現実で、それを取り払えるのはお互いを知ろうという気持ちであるとも語りました。
そして、「他の職種について最初から学べることがこの大学院の大きな意義。学修は生涯にわたって続くことでしょう。自分のために学んだことが組織のため、さらには患者のために寄与するものになると思います。学問を自分の組織に実装する、社会に実装していくところまで念頭に置きながら学ぶと、大きな実りになると確信します」と激励しました。
「今後も緊密な協力関係を」 広東薬科大学のガン・ユエンホン副学長
この後、来日中の広東薬科大学の先生方の紹介がありました。副学長のガン・ユエンホン先生が代表して祝辞を述べ、「大阪滋慶学園は大学院教育の発展に力を入れ、教育レベルは高い段階になっており、ますます輝かしいものになるよう期待しています。大学院の学修は高いレベルの知識の追究であり、学術研究に身を投じ医療のために人生の価値を実現することを望みます」と語りました。
広東薬科大学は創立66年。28000人の学生を抱えます。国際交流に力を入れ20ヵ国・地域の50余りの大学等と協力関係を結んでいます。2008年に同大学と大阪滋慶学園が協力関係を締結し、共に大きな成果を挙げてきました。最後に「貴学は我々の大学に発展の原動力を提供してくれました。今後も双方は教育、科学研究などの分野でより緊密でウィンウィンの協力関係を構築することを心から願っています」と挨拶をしました。


「最終ゴールは安心と満足の提供」 新入生代表
最後に新入生代表の看護師が宣誓し、「新たな学びの世界に足を踏み入れることに身が引き締まる思いです。医療安全活動の最終ゴールは、われわれが成しえる最高の医療を通じて、患者に安心と満足を提供することにあると考えます。医療安全が医療の根幹であり、医療安全管理者を中心とした安全文化の醸成が強く求められています」と語りました。
そのうえで、「新入生一同は医療安全に対する社会的要求に応えるべく、一人ひとりが高い志をもち、自己研鑽に励みます。また様々な地域や分野から集まった私たちは、仲間として出会えたことに感謝し、最高の先生の指導の下、医療の安全と質の向上に貢献する指導者となることを目指して、学業と研究に邁進することを誓います」と力強く述べました。
式典の後、同大学院を修了した12期生の看護師、鉾之原寛代さんが大学院2年間の学生生活の流れと、その後の活動についてプレゼンテーションしました。進学のきっかけは、医療安全をマネジメントする能力を身につけ、キャリアアップを目指したいという思いからだったと言います。研究テーマは「高齢患者の転倒・転落リスクに関する患者と看護師の認識の違い」を明らかにするという内容。修士課程を修了した後、「認定看護管理者」(管理者として優れており、組織を発展させる能力がある者として日本看護協会が認定する)の資格を得たことと、資格取得までの流れを紹介しました。


(Web広報センター)