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「強い意志と熱い思いを抱く救急救命士に」病院実習前の大切な儀式・徽章授与式 東洋医療専門学校救急救命士学科2年生117名が誓いを新たにしました 緊迫したシミュレーション訓練も披露

 東洋医療専門学校救急救命士学科の2年生を対象とした恒例の「徽章(きしょう)授与式」が11月18日(火)、大阪市淀川区の大阪ガーデンパレスで開かれました。これから始まる病院実習を前に、救急救命士になる誓いを新たにする大切なセレモニーで、教職員や家族らが見守る中、2年生117名が力強く決意表明。その後、交通事故や火山噴火などを想定したシミュレーション訓練で本番さながらの救急救命活動の様子を披露し、たくましく成長した姿を家族や来賓に見せました。

 第1部の授与式では、昼間部2クラス計79名と、夜間部1クラス38名が一人ひとり名前を呼ばれて起立し、それぞれのクラスを代表して3名が神納光一郎副学校長から徽章のバッジを授与されました。徽章には世界中で救急医療のシンボルマークとなっている「スターオブライフ」がデザインされています。

「人の生死を心に刻み付け、学業に励んで」太田学校長訓示

 学校長訓示で太田宗夫学校長は「今日、学校は皆さんに対して救急救命士をめざすことを承認し、教育することを約束しました。一方、皆さんはご両親や社会、学校に対して救急救命士になるため学業に精励すること誓約しました。つまり、徽章を授与する側と授与される側の間に強い絆ができたことになります」と授与式の意義を説明。これから救急救命の実務に触れていくにあたっての心構えについて、「救急救命士はやりがいのある仕事です。医療者としての自覚と責任を持ち、人の生と死を見つめてしっかりと心に刻み付け、学業に励んでください」と諭しました。

 最後は徽章に言及。「わずか2、3gにすぎませんが、その重みを感じ、心に留めてほしいと思います」と語りかけ、「おめでとう!」と祝福の言葉で締めました。

「初心を忘れず一歩ずつ前進を」灰方先輩祝辞

 続いて、東洋医療専門学校 救急救命士学科第1期卒業生で同学科同窓会絆命会の会長を務める灰方靖浩さん(京都府宇治市消防本部勤務)から、ご来賓を代表して祝辞をちょうだいしました。灰方さんは「一人のOBとして、先輩として、皆さんにお伝えしたいことがあります」と切り出し、あいさつや「ありがとう」といったお礼の言葉から始まるコミュニケーションの重要性や、どこへ行っても東洋医療の学生の代表として恥ずかしくないよう身だしなみを整えることの大切さを強調しました。

 最も力を込めたのが「初心忘るべからず」の言葉。自身の経験も交えながら「これから皆さんは、目の前に瀕死の患者さんがいるという場面に多く遭遇します。何とか救命できることもあれば、悔しい思いで亡くなっていく命を見つめるしかないこともあります。人の命に関わる仕事はハードルが高く、どこかでつまずくこともあるでしょう」と話をつなぎ、「そんなとき、この仕事を志したときの気持ちを思い出し、一歩ずつ前進してください」と説きました。

 そして、「助けを求める人の希望になれるよう、自分なりの救急救命士像をイメージしながらこの1年間を大切に過ごしてください」と後輩たちにエールをおくりました。

「強い意志と熱い思いを抱く救急救命士を目指します」25期生決意表明

 25期生を代表して昼間部の段林杏海さん、夜間部の加藤陽城さんが決意表明。「私たちは、シミュレーション実習を通して救急救命士に必要な知識、技術、人間性を養ってきました。これから始まる病院実習は、人命の尊さを学ぶとともに、医師・看護師の方々の指導の下、実際の医療現場を体験し、今まで学習してきたことを実践する機会となります。今後の病院実習や救急車同乗実習を通し、不測の現場活動に耐えうる精神力を養い、傷病者に対し冷静沈着に対応できる強い意志と熱い思いを抱く救急救命士を目指します」などと力強く誓いの言葉を述べました。

火山噴火、交通事故……傷病者多数の集団災害発生

 第2部では、授与式を終えた2年生がクラスごとに分かれて3会場でシミュレーション訓練を行いました。訓練は「心肺停止(CPA)」「集団災害」「外傷」「食中毒」などさまざまな救急事案を想定。家族や来賓のほか同学科1年生も見守る中、2年生全員が救急救命士、救助隊、医師、負傷者、家族などに扮し、本番さながらの緊迫した救急救命活動を約2時間にわたって展開しました。

蘇生の可能性を高める迅速な対応 トリアージ CPA症例の救命処置

 火山噴火による集団災害のシミュレーション訓練は3クラスとも実施しました。夜間部の訓練は、屋内外でさまざまな症例の負傷者が大量に出たとの想定で、救急隊6チーム、レスキュー隊2チームが出動。負傷者数や現場状況の確認などの情報収集をしながら同時進行で救助活動を展開します。飛んできた噴石に当たって倒れた人、がれきの下敷きになった人、火山ガスを吸って意識を失った人、車内に閉じ込められた人…。症状は、やけどや骨折といった外傷、一酸化炭素中毒、心肺停止など様々で、救助隊や救急隊は救助、応急処置から救護所への搬送・手当、病院への搬送まで、それぞれの役割を果たしながら他チームとも連携し、迅速に対応していました。

 昼間部Aクラスは「火山弾が工場を直撃して工場が爆発、救急隊の数を上回る大量の負傷者が発生」という想定。このような場合に行われるのが、傷病者の状態により治療の優先順位を決める「トリアージ」。現場に到着した先着隊が、傷病者の緊急度や重症度に応じて、「赤」(最優先治療群)▽「黄」(待機的治療群)▽「緑」(保留群)▽「黒」(救命困難群)—の4つのカテゴリーに分類してタグをつけます。脇腹に鉄パイプが刺さった負傷者には静脈路確保などの処置を施し、レスキュー隊に鉄パイプを搬送しやすい長さに切断してもらって病院に搬送。一酸化中毒で心肺停止状態に陥った人には自動式心マッサージ器で胸骨圧迫を行いながら気管挿管、アドレナリン投与などの処置が行われました。

 昼間部Bクラスも「火山噴火による工事現場崩落」との想定で訓練を実施。建物内に取り残された心肺停止の傷病者、クラッシュ症候群(がれきなど重いものに長時間挟まれていた人が圧迫から解放されたときにショック症状に陥ること)の疑いのある人、重要な臓器がある骨盤を骨折した人…。自らの安全確保も危ういという悪条件下で、重篤な症状の傷病者たちを懸命に救助しました。また、舞い上がる火山灰で視界不良となったことから起きた交通事故も。車とバイクの衝突事故で、傷病者は5人。症状は、出血性ショック(大量出血で命に関わる危険な状態)、フレイルチェスト(複数の肋骨が折れて呼吸が困難になる状態)、開放骨折(折れた骨が皮膚を突き破って外に出てしまっている状態)などで、ここでもトリアージが行われました。

 緊迫感あふれる訓練の連続。家族らは固唾を呑んで見守り、動画や写真に収める方も多くいらっしゃいました。

仲間たち、先生方、家族にささげる感謝の言葉

 訓練終了後、学生たちは家族らの前で隊列を組み、昼間部を代表して山田想大さんが、夜間部を代表して松永彩斗さんが感謝の言葉を述べました。2人は、ともに学び助け合ってきた仲間と全力で支えてくれた先生方に感謝の気持ちを伝え、最後に今日まで育ててくれた両親など家族に対し「産んでくれて、大切に育ててくれてありがとう」などと普段は照れくさくて口にできない感謝の言葉をささげました。見守る家族の中には目に光るものが見える方もいらっしゃいました。

 節目のセレモニーを終え、決意を新たにした117名の若者たちは、これから病院実習などを通じて多くの経験を積み、さらにたくましく成長していくことでしょう。