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滋慶医療科学大学大学院の入学式が行われました! 医療の質と安全を支える「知のネットワーク」が始動

 滋慶医療科学大学の入学式に続き、同大学院医療管理学研究科 医療安全管理学専攻 修士課程の入学式が4月4日(土)、挙行されました。この春、「医療の質と安全」を探求する大学院に入ったのは看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、診療放射線技師、言語聴覚士、診療情報管理士、生命科学の研究者…と、多様なバックグラウンドを持つ29名のスペシャリストたちです。大学院での研究を通じて、より安全で質の高い医療に変えていくことが期待される希望に満ちた入学式でした。

「学びとは自らを見つめ直し未来を問う営み」 千原國宏学長

 式典の冒頭、入学を許可された院生の名前が一人ずつ読み上げられた後、千原國宏学長が訓辞を述べました。学長は「学ぶ」ということについて、「単に知識を得ることではありません。社会の中での自らの役割を見つめ直し、より良い未来のために自分に何ができるのかを問い続ける営み」と語りました。多忙な仕事を持ちながら研究の道に進む院生たちは真剣な表情で聞いていました。

 さらに「今年は運営母体である学校法人滋慶学園が創立50周年という大きな節目を迎える記念すべき年です。半世紀にわたり『職業人教育を通じて社会に貢献する』というミッションを貫いてきた歴史を背景に、この大学院が医療安全管理学という専門領域で、高度な知識と実践力ある人材を育成する使命を担っています」と強調しました。

 また現代医療が高度化・複雑化する中で、医療の安全確保はもはや個人の努力の範疇を超えており、組織として安全を支える仕組みを整え「医療の文化」として、安全を根付かせることの重要性を指摘しました。

 医療の現場は、医学や薬学、工学、心理学、組織論、情報学など多様な領域が関わる学際的な分野だとしたうえで、「大学院は現場で抱いた疑問を学問の視点から見つめ直し、新たな解決の道を探求していく営みです」と述べました。仕事と学業の両立という険しい道を行く学生たちに、「地(地域・環境)は人を育て、育ちは社会を変える」という言葉を贈り、「大学院の学びが皆さんの志を確かなものにし、医療の未来を照らす力になることを祈念します」と激励しました。

「医療安全はマネジメントであり経営の問題」 浮舟邦彦理事長

 運営母体である学校法人大阪滋慶学園の浮舟邦彦理事長は祝辞で、まず2011年に日本で初めて医療安全を専門とする滋慶医療科学大学院大学として開設されて以来、成果をあげてきた歴史について言及しました。

 AIやロボットなど急速に進化する技術面だけでなく、現代医療を取り巻く環境について、理事長は「少子高齢化、新たな感染症の脅威、医療事故調査制度、働き方改革、地域包括ケア、サイバーセキュリティなど、多岐にわたる課題に対応すべく、医療現場はドラスティックな変化をしている」と指摘。そのうえで「医療安全はマネジメント、すなわち病院経営そのものの問題であることを意識していただきたい」と強調しました。

 さらに大学院の最大の特色が、優れた教授陣のもと多職種の学友が同じ教室で学び、異なる背景を持つ仲間たちで支え合い、議論し合えることだしています。「この知のネットワークがいい経験になります。学友とのネットワークを大切にしていただきたい。医療の質と安全の専門家として、たくましく成長されることを祈念します」と締めくくりました。

「ケアの質を高める努力も必要」 大阪医療センター、松村泰志院長 

 来賓として登壇した独立行政法人国立病院機構 大阪医療センターの松村泰志院長は、40年以上にわたる医師としての歩みと、医療安全の歴史的変遷を振り返りながら、未来への提言を行いました。

 松村先生は、かつては新しい医療技術や新薬の開発こそが最高の価値とされていた時代があったことを回想しました。「その後、少子高齢化が重大な課題となり、1999年に相次いだ医療事故をきっかけに、医療安全への社会的な関心が一気に高まりました」といいます。2001年の「患者安全推進宣言」や、米国の報告書『To Err Is Human(人は誰でも間違える)』の中にある「事故は組織の複数の要因が重なって生じるシステムの問題」という提言が多くの共感を呼んだと語りました。

 松村先生はこれからの医療について、「高度化する医療技術をただ受け入れるのではなく、それをいかに適切に管理し、適用するための体制を整えるかということが、新たな課題として認識されるようになっています。また、少子高齢社会では、高齢患者の転倒・骨折、認知機能の低下、誤嚥性肺炎といった問題に対しケアの質を高める地道な取り組みが必要です」と訴えました。

 地方での医療者不足、限られた人員での適切なケアの提供、高騰し続ける医療費の中で、いかに国民皆保険制度を維持していくかなどの課題を指摘。「皆さんはこれらの課題を自らのテーマとして研究に取り組もうとしているのだと思います。社会は課題解決ができる人材を求めており、医療を支える存在となっていただくことを願います」と期待を寄せました。

「現場の知見を客観的な視点から再構築します」 新入生代表

 式典の締めくくりは、新入生代表の医療管理学研究科、小橋一雅さんによる宣誓です。小橋さんは、技術の高度化と患者ニーズの多様化によって、医療現場が複雑な課題に直面している現状を報告しました。「個人の努力や経験則のみに頼るのではなく、システムとして医療安全を根付かせることが重要であり、科学的な根拠の必要性を痛感しました」と語りました。

そして、「大学院での学びを通じ、私たちが培ってきた現場の知見を客観的かつ学術的な視点から再構築してまいります。人的エラーを組織の問題として許容する文化の醸成や、データに基づく安全管理の手法を確立することで、患者さんが安心して医療を受けられる社会の実現に寄与することを目指します」と力強い言葉で宣誓しました。

大学院での学生生活と終了後の活動を紹介 第12期修了生

 大学院の第12期修了生で、宝塚医療大学和歌山保健医療学部の准教授、椎木孝幸さんが、大学院での学生生活と終了後の活動についてスピーチしました。椎木さんは理学療法士として29年間にわたり病院に勤務。管理職も務めてこられたスペシャリストです。2024年に大学院を修了後、大学教員に転身しました。

 コロナ禍をきっかけに「現場の疑問を解決したい」と入学を決意したものの、最初は「2年で卒業できるのか」という不安を抱えていたそうです。新入生への助言として1年目に計画的に単位を取得し、2年目に研究時間を確保することや、指導教員と密に相談しながら進める重要性を強調しました。

 大学院での学びを通じて「正しい研究手法」を習得し、多職種の仲間とのネットワークを得たことは、大きな財産になっていると語りました。椎木さんは現在も医療管理学研究科の研究生として研鑽を積み、学会発表などをしています。後輩たちに「研究は時に孤独で辛いこともありますが、先生方のサポートを信じ、同期と支え合って乗り越えてほしい。修了後には必ず新しい自分に出会えると思います」とエールを送りました。