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浮舟総長が大阪大学で講演 「新しい職業教育分野を開発する」 起業家精神を語る

阪大の学生たちに講義をする滋慶学園グループの浮舟邦彦総長

 大阪大学(大阪市豊中市)の基盤教養教育科目「関西は今~関西経済界のリーダーたちとの対話~」の講師として、滋慶学園グループの浮舟邦彦総長が7月1日(月)、1時間半にわたって講義をしました。タイトルは「専門学校における職業人教育 『人』を育てる―学生として、スタッフとして」。100人近い学生らを前に、社会の変化に対応した新たな職業教育分野の開発や産学連携教育など、40年以上にわたる学校経営者としての取り組みと、これからのテーマについてたっぷりと語りました。    

 「関西は今」は1、2年生が対象。関西経済界のリーダーを講師に招き、リレー形式の講義と質疑応答によって、最新の産業界や社会の動向を学ぶのが狙いです。大阪大学の全学教育推進機構が主催、関西経済同友会と関西サイエンス・フォーラムが協力しており、今年で14年目。浮舟総長は2017年から毎年講義を行っています。

社会変化の中で将来をいかに見るのか 4つの視点から理解を

 総長はまず、滋慶学園グループの専門学校・高等専修学校76校で現在3万人を超える学生が学んでいることを紹介。1960年代から現在までの18歳人口の推移と社会の変化のグラフを示しながら、1976年、35歳のときに現在の新大阪歯科技工士専門学校の前身となる技工士学校をスタート。バブル崩壊後の1992年、18歳人口がピークの205万人のとき10校で1万人の学生数だったが、マーケットが縮小するかで、企業との連携などをいち早く手がけて、現在に至ったことを説明しました。18歳人口は現在120万人で、今後はさらに減少すると指摘。「社会変化の中で将来をどのように見て、生きていくかが大事」とアドバイスしました。

  • 18歳人口の推移と社会の変化
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  • 変化を理解する4つの視点
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 さらに、①文明論的な変化~近代工業社会から知識社会へ~、②世界の枠組みの変化、③日本社会の変化、④科学技術の進歩―の4つの視点からの変化を理解しておくことの重要性にも言及。キャリア教育や職業教育、産・官・学の連携による教育の重要性を浮き彫りにしました。

 そのうえで求められる人材について、「かつての工業社会では『協調性のある人』だったのが、現在の知識社会では『自ら考え行動できる人』です。専門分野の知識と技術を身につけ、思考力・判断力・表現力があり、多様な人と協力できる人が必要とされています」と説きました。

 また総長は、大学を卒業してから専門学校に入る人など社会人入学者が全体の3割近くにのぼっているなど、進路が多様化している状況を解説。国家資格が必要な医療系の職種をはじめ、デザイナー、AIエンジニア、ロボットエンジニア、IR、ホテル・観光など約500職種の人材の養成に取り組んでいることや、米国バークリー音楽大学など多数の海外の大学・教育機関と提携していること、50カ国から計2,300人以上の留学生を受け入れていることなどを説明しました。

eスポーツにホワイトハッカー… 先駆的な職業教育の取り組み

 講義の核心は、新たな職業教育分野の開発についてです。浮舟総長は「私たちは『職業人教育を通して社会に貢献する』というミッションを持っています。教育カリキュラムは、実学教育、人間教育、国際教育の3つの理念に基づき構成されています」と説明。入学前から目的を明確にし、仕事観をもってもらいたいという思いから、中学生・高校生を対象にした社会貢献イベント「職業体験セミナー」を毎年行っていることなども説明しました。

 そのうえで、職業教育の先駆的な取り組みとして、故日野原重明先生らと共に医療秘書の教育を推進し学会までつくってきたこと、1980年代には臨床工学技士やバイオテクノロジーの技術者を養成する大阪ハイテクノロジー専門学校、商業音楽をバックアップする人材を育てる大阪スクールオブミュージック専門学校を創設してきたことなどを語りました。

 「バイオを研究・教育する大学はありますが、その技術を活用して実際に細胞や染色体の培養をするテクニシャンが求められると考えました。音楽分野では、クラシック音楽の大学はあっても、商業音楽の制作や音楽ビジネスのための人材育成が必要になるとの思いからです。動物看護師、スポーツインストラクターなどもそう、世の中にない学科・専攻をつくり、新たな業界を開拓してきたわけです」

 今年4月にOCA大阪デザイン&IT専門学校でスタートした、サイバーセキュリティーのスペシャリストを養成するホワイトハッカー専攻(4年制)は、警察関係者や官公庁なども注目。この分野の人材育成の必要性を示しています。また、3年前から全国8校で順次開講しているeスポーツでは、世界的に通用するプロゲーマーの養成だけでなく、eスポーツの大会をつくるイベントスタッフ専攻、スポーツビジネスや経営学などを学びチーム運営のプロをめざすeスポーツマネジメント専攻を設けるなど、将来を見越したグループの教育体制に、阪大生も興味津々の様子でした。

  • 熱心に総長の講義を聴く学生たち

  • 浮舟総長も話に力が入ります

産学連携教育で即戦力の人材を 不変の理念は「顧客の価値の創造」

 総長はさらに様々な産学連携・地域連携の教育の例をあげ、今後の取り組みとして、変化を受け止めて新しい学科をつくり、新しい分野の人材育成をすることや、ベンチャー企業の育成、2030年に向けての持続可能な開発目標であるSDGsへの対応などのテーマについての思いを語り、不変の理念として「私たちの仕事はお客様―学生や産業界―の価値を創造し、高めていくことなのです」との言葉で締めくくりました。

阪大生たちは次々に手をあげ、熱心に質問

 この講座は学生たち1人ひとりが質問を考え、チームで話し合って代表が質問するというシステム。質疑応答は30分以上続きました。主な質疑応答は次の通りです。


Q:新しい教育分野をどうやって見つけ、いかにカリキュラムをつくりますか?

A: eスポーツの場合、数年前にアニメ・声優の学校(東京・アニメ声優&eスポーツ専門学校)の学生たちから、eスポーツのゲームの実況に関心があるという話や、ゲームで生計を立てている人がいるという話を聞いて、「そんな業界があるのか」と初めて知りました。ゲーム業界に話を聞くとeスポーツ分野は人材不足だとわかり、日本中どこにもなかったコースをつくったわけです。つまり学生に教えられたのです。カリキュラムは、プロのチームの運営者やゲーマーの方々に話を聞くなどしてつくりました。

  • 質疑応答がはじまります

  • 学生の質問に耳を傾ける浮舟総長 


Q:学生たちが就職難民にならないよう支援を続けるような取り組みはありますか?

A: どの学校にもキャリアセンターがあり、支援を続けています。専門学校ですから就職にはとても力を入れています。業界が求める人材を輩出していかなければなりません。社会の変化に伴い、求める人材もかわっていきます。それをキャッチアップしていくのです。就職率はほぼ100%です。ただし、漫画家やミュージシャンとしてデビューしたいと思っていても、誰でもなれるわけではありません。例えば漫画家になれなくてもイラストレーターやデザイナーなどの道をアドバイスします。


Q:外国人の受け入れに対して、学校ではどういうカリキュラムをとっているのでしょうか?(タイからの留学生)

A: まずは日本語です。留学生にとって壁が厚い日本語のトレーニングは、常に行っています。卒業生の中には中国人留学生で、日本の国家資格をとって臨床工学技士や、看護師として日本国内の病院に就職している人もいますよ。グループには日本語学校もありますし、ビザの問題からアルバイトなど、あらゆる生活面のサポートをする留学生センターという組織があります。

 講義の終了後にも2人の学生が廊下で総長に質問。経済学部の学生は、「職業教育・キャリア教育の話はこれまで聞いたことがない話でした。話の中にたくさんの重要なテー マがあり、色々なことを考えさせられました。(35歳で専門学校を立ち上げた浮舟総長の話は)起業をしたいと考えている僕にとって興味深かったです」と話していました。